ユ・アインの「地獄が呼んでいる」、「イカゲーム」に続いてセンセーション巻き起こせるか|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2021/11/20 23:00

ユ・アインの「地獄が呼んでいる」、「イカゲーム」に続いてセンセーション巻き起こせるか

Netflixオリジナル韓国ドラマ「地獄が呼んでいる」が、11月19日より配信開始になった。配信に先駆け、9月の第46回トロント国際映画祭のプライムタイム部門(テレビ番組プレミア部門、2021年は今作のみ)で前半3話を上映、続いてロンドン国際映画祭、釜山国際映画祭でも上映されるなど、Netflix製作のドラマでありながら映画祭を中心に積極的にプロモーションを行なっていた。今作は『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)のヨン・サンホ監督によるホラー・サスペンスで、『バーニング 劇場版』(18)、『#生きている』(20)などのユ・アインが新興宗教団体のリーダーを演じている。とにかくユ・アインの抑えめな演技による怪演が印象的で、物語のスピード感も恐怖描写もいままでのドラマにはないものだ。得体の知れない“物体”と、曲解された正義感を振りかざす集団が、警察・検察や司法に代わり罪人を罰していく。そこには現代社会への強烈な皮肉が込められている。

【写真を見る】「地獄が呼んでいる」のヨン・サンホ監督と出演陣
【写真を見る】「地獄が呼んでいる」のヨン・サンホ監督と出演陣Netflix

ごく普通のソウルの日常が、突如謎の物体によって地獄絵図に塗り替えられてしまう。この不可解な超常現象に混乱するなかに現れた、新興宗教団体“新真理会”のリーダー、チョン・ジンス(ユ・アイン)。この現象は神の意思によるものだと主張し、新真理会を盲信する信者たちは暴走を始める。この事態を危険視した弁護士や刑事は、新興宗教が扇動し引き起こした大混乱を治めようとするが…。

地獄行きを宣告された人物は、この世のものではない存在によって残酷に焼き殺される(写真は「地獄が呼んでいる」)
地獄行きを宣告された人物は、この世のものではない存在によって残酷に焼き殺される(写真は「地獄が呼んでいる」)Netflix

トロント国際映画祭での上映後質疑応答に登壇したヨン・サンホ監督は、原作のウェブトゥーン「地獄」の作者であるチェ・ギュソクと旧知の仲で「昔よく遊んだ仲間と、もう一度なにか一緒にやってみたい」と、原作から開発に携わったと明かした。コラボレーションを始める際に参考にしたのは、浦沢直樹の「20世紀少年」が醸すミステリーの謎解きの高揚感と複雑な感情を生む読後感。全6話の脚本・監督を務めたヨン・サンホ監督は、「通常、脚本を執筆する時は、自分が演出することを前提に、映像を思い浮かべながら書くことが多いです。でも今回は少し異なりました。映像ではなく、ウェブトゥーンになった時にどう見えるかを意識しました。そのため、チェ・ギュソクをはじめ、漫画の専門家の視点を取り入れ脚本を書くことができたので、とても楽しい執筆作業になりました」と語った。だが、漫画がストーリーボードの代替となったわけではなく、「ウェブトゥーンと映像の演出法はまったく違います。この作業で得ることができた視点は、ウェブトゥーンではどのように登場人物の感情の動きを表現するかということでした。それを実写映像にするにはどうすればいいかを演出に持ち込んだのです」と説明した。

弁護士のミン・ヘジンは地獄に呼ばれた人を守ろうと、新真理会が扇動する大混乱に立ち向かう(写真は「地獄が呼んでいる」)
弁護士のミン・ヘジンは地獄に呼ばれた人を守ろうと、新真理会が扇動する大混乱に立ち向かう(写真は「地獄が呼んでいる」)Jung Jaegu | Netflix


『箪笥(たんす)』(03)、『悪魔を見た』(10)のキム・ジウン監督作で、Apple TV+にて配信中の「Dr.ブレイン」、日本未配信だが、『8月のクリスマス』(98)、『4月の雪』(05)のホ・ジノ監督作でJTBCの「人間失格」そして、『トガニ 幼き瞳の告発』(11)、『怪しい彼女』(14)のファン・ドンヒョク監督が「イカゲーム」を演出したように、韓国ドラマ界では映画監督がドラマシリーズを演出する機会が増えている。ヨン・サンホ監督は、2つのメディアの違いをこう分析する。「映画は、劇場に入った瞬間に一つの物語を最後まで観ることが約束されます。映画ははっきりとした完成形を観せるという概念で作られています。ドラマシリーズを手掛けた際に念頭に置いたのは、どのような感情の動きを演出に取り込み、物語を語るかという点でした。私はアニメ番組やウェブトゥーンが大好きなのですが、それらは週に1話という連続性を保つために、次のエピソードが待ち遠しくなる観賞後感を醸成します。その概念を取り入れるようにしました」。その絶妙な“クリフハンガー”に駆られ、全6話をあっという間に観終わってしまう。

セウォンは死者と“脳のシンクロ”を行い、彼らの記憶にアクセスする(写真は「Dr.ブレイン」)
セウォンは死者と“脳のシンクロ”を行い、彼らの記憶にアクセスする(写真は「Dr.ブレイン」)Apple TV+

ストリーミングサービスの台頭によって、映画とドラマシリーズの垣根も取り除かれ始めて久しい。ハリウッドでも映画監督がドラマシリーズに進出することは珍しいことではなくなり、傑作ドラマが増えている。2時間の作品の中に完成した世界観と物語の起承転結を描くことに長けた映画監督が、ドラマシリーズだから描けるクリフハンガーとキャラクターアーク(物語を通じたキャラクターの変化曲線)を取り込んだことにより、視聴者が没入しやすいエンタテインメントができあがったのだろう。「イカゲーム」の世界的大ヒットに続きNetflix韓国が投入する「地獄が呼んでいる」は、また世界中にセンセーションを巻き起こすことだろう。

元刑事出身のガンムはセウォンの助っ人として謎を解いていく(写真は「Dr.ブレイン」)
元刑事出身のガンムはセウォンの助っ人として謎を解いていく(写真は「Dr.ブレイン」)Apple TV+

文/平井伊都子

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