『ハリー・ポッター』から『THE BATMAN』へ…ロバート・パティンソン、開拓を続ける妥協なき道程
堕落した大富豪や人生に行き詰まった男、外道など…アクの強いキャラクターでたしかな存在感を発揮
日本では劇場未公開となった『天才画家ダリ 愛と激情の青春』(08)で若きサルバドール・ダリを演じると、デヴィッド・クローネンバーグ監督作『コズモポリス』(12)では退廃的なニューヨークの大富豪役に挑戦(クローネンバーグ作品には『マップ・トゥ・ザ・スターズ』にも続けて出演)。デイン・デハーンと共演した『ディーン、君がいた瞬間』(15)には、ジェームズ・ディーンがニューヨークのタイムズスクエアを歩く姿を捉えた、印象的な写真を撮ったカメラマン役で出演している。
『アンカット・ダイヤモンド』(19)などで知られるジョシュ&ベニーのサフディ兄弟監督作『グッド・タイム』(17)になると、ビジュアルも一気に豹変する。犯罪を重ね続ける最下層の青年を演じたパティンソンは、無精ひげに髪はボサボサ、着ているものも汚らしい、やさぐれた風貌で登場。人生に行き詰まった男の焦燥感や抜け出せない負のループを演じ切った彼の存在は圧巻で、第70回カンヌ国際映画祭で上映された際は、「キャリア最高の演技」と絶賛されている。
このほか、海に囲まれた孤島を舞台にした『ライトハウス』(19)での、ウィレム・デフォー演じるベテラン灯台守にいびられ続けて精神を病んでいく新人灯台守のキャラクターも強烈。『ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏』(19)の高圧的な態度で人々を虐げる軍人役には戦慄させられ、歴史劇『キング』(19)での、長い金髪をなびかせる姿が美しいのにどこか残念でラストも情けないフランス皇太子、『悪魔はいつもそこに』(20)の女性信者を凌辱する外道の牧師…と、その振り幅もどんどん広がっていく。
『TENET テネット』のニール役で再ブレイク!新“バットマン”にも抜擢
このように、「トワイライト」シリーズ以降、大作映画への出演から遠のいていた感のあるパティンソンだが、ここにきて新展開が。クリストファー・ノーランによる時間の“逆行”を描いたSF超大作『TENET テネット』(20)で演じた、主人公の“名もなき男(ジョン・デイヴィッド・ワシントン)”をサポートするエージェントのニールが話題になったからだ。ここ数年は見られなかったヒロイックなキャラクターで、クールで“できる男”な佇まいが大勢の観客を魅了。クライマックスでの己の宿命に1人向かっていく姿に涙した人も多いに違いない。
さらに、マット・リーヴスが監督を務める『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年春公開)では、バットマンことブルース・ウェイン役に抜擢。バットマンとしての活動を始めてから2年目の若きウェインが描かれるとのことで、その葛藤や苦悩をパティンソンがどのように表現するのか、安定したポジションに留まらず、新境地を開拓し続けてきた彼だからこそ、その期待も大きい。
かつてのレオナルド・ディカプリオ、「ハリー・ポッター」で共演したダニエル・ラドクリフがそうであったように、イメージを固定化されるのをよしとせず、作品選びに妥協することなく俳優の道を突き進んできたパティンソン。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』から始まった彼のキャリアを思い返しながら、1つのターニングポイントにもなりそうな『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を楽しみに待ちたい。
文/平尾嘉浩