ダイアナ元妃からエリザベス1世まで、英国王室の誇りと苦悩を描くロイヤルファミリー・ムービーまとめ
19世紀:大英帝国の繁栄を築いたヴィクトリア女王の情熱と癒し/『ヴィクトリア女王 世紀の愛』『Queen Victrioa 至上の恋』『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
植民地化政策を推し進め、大英帝国として繁栄を極めた時代の統治者となったのが、在位約64年のヴィクトリア女王。『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(09)では、18歳で即位したヴィクトリア女王(エミリー・ブラント)が、権力争いに巻き込まれながらも、母方の従弟であるアルバートとの激しい恋を貫く姿が描かれる。
しかし夫となったアルバートが42歳の若さで亡くなり、心に深い痛手を負った女王は長期の喪に服す。ジュディ・デンチが二度に渡りヴィクトリア女王を演じ、『Queen Victrioa 至上の恋』(97)では最愛の人を失い意気消沈した女王と彼女に寄り添う使用人ジョン・ブラウンとの絆が、そして『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(17)では、晩年期に入った女王と自身の即位50周年記念式典にイギリス領のインドから記念品の献上者として遣わされた青年アブドゥル・カリムとの年齢を超えた交流が語られる。
16世紀:イングランドの黄金期を築いたエリザベス1世の数奇な人生/『エリザベス』『エリザベス ゴールデン・エイジ』『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』
生涯独身を貫き、国にすべてを捧げてイングランドの黄金期を築き上げたエリザベス1世。ケイト・ブランシェットが“ヴァージン・クイーン”を演じた『エリザベス』(98)とその続編『エリザベス ゴールデン・エイジ』(07)では、ともにヘンリー8世を父に持つプロテスタントのエリザベスとカトリックの異母姉メアリー1世との勢力争いと、即位後に強国スペインの無敵艦隊に果敢に挑み、時代を切り拓いていく彼女の勇猛果敢な様子が格調高く描かれる。
そして『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(18)では、スコットランド女王であるメアリー・スチュアートとエリザベスに焦点をあてて、2人の女王の波乱万丈の生涯を活写。『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2022年1月28日公開)が控えるシアーシャ・ローナンがメアリー、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(21)のマーゴット・ロビーがエリザベスに扮した。
なおヘンリー8世のローマ・カトリック教会からの分離については『ブーリン家の姉妹』(08)が詳しい。後にエリザベス1世の母となるアン・ブーリンをナタリー・ポートマン、妹のメアリー・ブーリンをスカーレット・ヨハンソンが演じた。ヘンリー8世の寵愛を競い合う姉妹の嫉妬と葛藤が渦巻く人間ドラマも必見だ。
まるでおとぎ話のような華やかな世界を垣間見せてくれる英国ロイヤルファミリー・ムービー。絢爛豪華な歴史スペクタルでありながら、彼らが抱える悩みや葛藤、孤独が等身大に描かれ、その人間ドラマが観る者の心を捉えて離さない。最新作『Spencer』『Diana』ではどんな感動を与えてくれるのか?2作品の公開を期待して待とう。
文/足立美由紀