黒沢清×清水崇、“Jホラー”師弟対談が実現!伝説の不条理ホラー『回路』はどのように生まれた?

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黒沢清×清水崇、“Jホラー”師弟対談が実現!伝説の不条理ホラー『回路』はどのように生まれた?

「なんて恐ろしい死の哲学を考える人だ…」(清水)

【写真を見る】黒沢清が語る、“死の哲学”と幽霊表現へのこだわりとは?「幽霊がどうして怖いのかわからない」
【写真を見る】黒沢清が語る、“死の哲学”と幽霊表現へのこだわりとは?「幽霊がどうして怖いのかわからない」

黒沢「この『回路』、改めて観直してみようと思ったんですけど、怖いから観直せていないので、最後に観たのはもう何年前だったか…。だからなんでそうやったのかとか聞かれても思い出せないことだらけなんですが、当時は『リング』が大ヒットして、それに便乗するようなかたちでホラー映画を作ろうということになり、バタバタと作った記憶です」

清水「僕はこれを初めて観た時、反応が見たいからと当時の大映のプロデューサーに試写に呼ばれて行ったら、1人しかいなくて。観終わってから『ものすごいことやっちゃっていますね』と感想を伝えたら、担当の方は『実は凄すぎて僕らには理解が及ばない。どう宣伝していいのか教えてください』と言われたんです(笑)」

黒沢「元々は『とにかくホラーを撮ってくれ』という話から始まったんです。でも実は僕は昔から、幽霊がどうして怖いのかよくわからないんです。単純な映画では幽霊が出てきて主人公が殺されたりしますが、殺されたらどうして怖いのかと小さい頃から疑問に思っていました。殺されて怖いのは死ぬからで、死んだらどうなるかわからないから怖い。でも目の前に幽霊という“死んだらこうなる”手本がいるわけですよね。そうしたらもう死ぬことは怖くなくなるのに、なんでホラーでは怖いということになるんだろうかと。

『回路』では幽霊が出てきても人を殺すわけでもない。殺して自分たちの仲間にしようともしないけれど、生かしてもおかない。代わりに存在そのものを消滅させようとするのを幽霊の目的にさせようというのが一つありました。そしてもう一つ、以前から宇宙人が侵略してくる映画を作りたいという欲望があって、それなら幽霊が侵略してくる映画をできないかと思い、その2つを組み合わせて行ったのです。そうしたら自分でもよくわからないうちにこんな妙な映画になったというわけです(笑)」

清水「それを聞いてなるほどな、と思いました。映画のなかで幽霊と思しき霊魂が現れて迫ってきて、わっ!となったところでカットが切れて違うシーンに行く。はたしてそこでなにがあったかわからないというのを、僕も『呪怨』とか作りながらよく考えました。死んだのかどうか、原因がわからないのが怖かったりする。でもその後どうなったのか、『回路』では一つの答えを出している気がしたんです。幽霊が映画に出て喋ったら台無しになっちゃうことが多いなかで、『回路』には幽霊が一言喋るシーンがある。なんて恐ろしい死の哲学を考える人だと思いましたね」


『回路』の発想の原点や撮影当時の思い出を語った黒沢清監督
『回路』の発想の原点や撮影当時の思い出を語った黒沢清監督

黒沢「幽霊を出すにあたって、『どう出すのか?』『出てきたら生きてる人間はどう反応する?』と考えた挙句、そこに行き着いた感じですね。ただやはり幽霊といっても、日本のJホラーでは往々にして俳優がそれを演じています。すると、監督の立場としては俳優に『こうしてください』と指示を出さなければいけない。そういう時に、『幽霊とはこういう設定です』と言わなきゃならないので、無理矢理にでも幽霊について考えざるを得なかったのです」

清水「この映画のメイキングを何度も観ているのですが、その中で現場でメイキングディレクターの方が『幽霊は怖いですか?』『幽霊はいると思いますか?』と色々な人に聞いているんですよね。黒沢監督は『いたら怖いですよね〜』とニヤニヤしながら明確な答えを出していなくて、なんて滔々としているんだろうと思いました」

黒沢「まったく覚えてないんですが(笑)。でもこう言ったら身も蓋もないかもしれませんが、現場って怖くないじゃないですか」

清水「そうなんですよね」

黒沢「現場は怖がっているどころじゃない。仕事なんだから。だから仕事場で幽霊怖いですかと聞くのが野暮という本音が出ていたなじゃないですかね…。まあ僕も夜道を1人で歩いていたら幽霊が出てきそうな気がして怖い時もありますよ(笑)」

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