竹内涼真が考える“生きていくこと”とは?「相手を思い遣ったり、自分が信じているものに対して一直線に答えを求めてもがくこと」
2015年の本屋大賞に輝いた、上橋菜穂子のファンタジー小説をアニメ映画化した『鹿の王 ユナと約束の旅』(2月4日公開)。ハイクオリティのアニメーションを創出し続ける制作スタジオProduction I.G、監督に『もののけ姫』(97)、『千と千尋の神隠し』(01)、『君の名は。』(16)で作画監督を担当した安藤雅司、共同監督に『千と千尋の神隠し』で宮崎駿の監督助手として名を連ねた宮地昌幸、脚本に「ハイキュー‼」シリーズで知られる岸本卓と、日本アニメ界の誇るクリエイターが結集したことでも注目を集めている。
そんな本作で2人目の主人公とも言える天才医師ホッサルを演じたのが、竹内涼真だ。声優の仕事としては吹替を担当した『名探偵ピカチュウ』(19)に次いで2度目となるが、「アニメーションのキャラクターの声は、これまでご縁がなかったのでビックリしました。不安もありましたが、(安藤)監督が自分にオファーをしてくださったと聞いて、うれしかったです」と明かす。
「このビジュアルから、どんな声が出てきたらステキなのか?と考えながら、少しずつ探りながら近づけていった」
すぐに原作を読み始め、その途中で台本とキャラクターの画を手にした竹内は、「なるほど、(ホッサルは)こんなにイケメンなのか、まずいぞ…と(笑)。初めて監督にお会いした際、思わず『本当に僕で大丈夫ですか?』と確認してしまいました」と苦笑する。そんなホッサルの声を、「普段から人は見た目や雰囲気から、その声を想像したりしますよね。アニメ作品ではそういう印象が特に大事だと思ったので、いつものように人物像から作っていくのに加え、ビジュアルから探る作業をしてみました。このビジュアルから、どんな声が出てきたらステキなのか?と考えながら、監督や周りのスタッフさんと一緒に、少しずつ探りながら近づけていった感じです」と、時間を掛けて探し当てたという。
強大な帝国・ツオルにその名を轟かせる天才医師であり、帝国に蔓延する謎の病、ミッツアルを解明しようと命懸けで奔走する美しきホッサルは、原作の読者にも人気の高い憧れの存在だ。そんなホッサルを竹内は、「僕は“クールでカッコイイ”という印象をあまり持ちませんでした。それより“まじめで悪気がない人”というキーワードが先に浮かんで。この時代、代々受け継がれて来た医師という高い位の一族に生まれ、大事に育てられ、“ホッサル様”と呼ばれるような生活を送って来た人物だからこそ、実は周囲の人たちから見たら世間知らずでもあるんだろうなと」と捉えたと語る。
「馬から落ちて慌てたり、薪が割れなかったり、火を起こせなかったり(笑)。ダサいところにも魅力を感じた」
そして「彼のちょっと嫌味っぽい話し方や、尖ったような物言も、冷たい人だからではなく、生まれつき高い位にあった世間知らずゆえの、悪気のなさからだと思いました」という考察からも役を作っていったそう。いかにも繊細そうな声音は、観ている間は完全に普段の竹内のものだと忘れさせられたと伝えると、「そう言ってもらえると、うれしいです」と笑顔を見せ、ホッサルの人間像をさらに掘り下げてくれた。
「こんなきれいな外見ですが、中身はすごく男性らしい。地位や名誉が元々ある環境に生まれながら、人の命を救うために闘い続ける強い信念を持っている。とても芯が強く、信念を曲げない面がある一方、ヴァンという新たな人間と出会えば、必死に理解して受け入れようとする柔軟な面もある。そして新しい知識や解釈に飛び込んでいく勇気や力があるのは、とにかく医者としてすばらしいですよね。だからこそ、ひとつ殻を破って、ヴァンの道行きについていくわけですが、そこにもホッサルの男らしさを感じました」。熱く語りながら、「でも、ダサいところもあるんですよ! 馬から落ちて“ワ~ッ”と慌てたり、薪が割れなかったり、火を起こせなかったり(笑)。そういうところにも、とても魅力を感じました」と笑いながら付け加えた。