高良健吾と行定勲監督が、熊本復興の映画に込めた思いを告白
2016年4月14日に発生した熊本大地震から1年経った4月14日、熊本出身の行定勲監督が熊本でロケを行った映画『うつくしいひと』(16)の続編『うつくしいひと サバ?』(今夏公開)の東京上映会が、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された。囲み会見と舞台挨拶には高良健吾、米村亮太朗、中別府葵、石橋静河、ロイック・ガルニエ、行定勲監督が登壇し、熊本復興と映画への思いを語った。
前作『うつくしいひと』は、熊本県の素晴らしさをアピールしようと、熊本県と熊本出身のキャスト・スタッフにより制作された人間ドラマ。映画には震災前の熊本城、菊池渓谷、阿蘇草千里の風光明媚な景色が収められている。地震後はチャリティ上映会が国内外約200か所で上映された。
行定監督は震災後すぐに被災地に出向き、俳優仲間とボランティア活動を行い、『うつくしいひと』を通してのチャリティに参加してきたが、続編制作にもいろんな思いを胸にして臨んだ。映画の上映前の舞台挨拶で行定監督は「熊本の復興の途上、とにかく踏ん張っていろんな思いで頑張っている人たちを見て、この風景、この気持ち、この心情を映画に残さなければいけない、未来の熊本を生きている人たちに届けるようにと、そんな気持ちで作りました」と語った。
また行定監督は、多大な被害を受けた益城町の被災者とのやりとりをはじめ、現地の生の声も劇中に反映したと明かした。「熊本のためになりたい、助けになるような映画を作りたいと言った時、あるおじいさんから『お前に何がわかるとや』と言われたんです。『お前に俺たちの絶望がわかるかと。60年住んでた家が倒壊。最後に死ぬ場所はそこじゃない。家を建てたとしても立つ前に死ぬ』と。非常に心に刺さりました。僕はこの感情はたくさんの人が知るべきだと思った」。
高良は「自分は熊本が好きでそこで育ったけど、だからこそ見えない部分、しゃべれない部分があると、この1年で感じました。県外の人たちが話してくれることで気付かされる熊本も多かったです」とこの1年を振り返った。
さらに高良は「ずっと引きこもっていた友達がいたけど、地震が起こって家から出てきたんです。避難所となった地元の中学校で久しぶりにみんなと会った。そしたらその友だちが車の整理とかを全部仕切っていて、そいつにとってこの地震は何だったんだろうといろんなことを思いました」と感慨深い表情で語った。
行定監督は「劇中の台詞や、設定などはほとんど本当にあったことばかりです」と言う。「益城町で『お前に何がわかるとや』と言われた時、みんながびびりましたが、僕はそれをそのまま台詞に入れようと思った。要するにきれいごとじゃない。被災し、それでも生きている人たちがいることを知っていかなければいけない。たくさんのことをこの映画を作ることによって教えられました」。
『うつくしいひと サバ?』は高良健吾を主演に迎えた人間ドラマ。今夏、前作『うつくしいひと』とセットで全国にて順次公開される予定だ。【取材・文/山崎伸子】