黒人男優初のオスカー受賞を成し遂げたレジェンド、シドニー・ポワチエが94歳で逝去
『野のユリ』(63)で黒人男優として初めてアカデミー賞主演男優賞を受賞する快挙を成し遂げ、『招かれざる客』(67)など長年にわたってハリウッドで活躍した伝説の名優シドニー・ポワチエが、現地時間1月6日夜に亡くなった。94歳だった。
バハマのフレデリック・ミッチェル外務大臣の報道官が明かしたところによれば、「シドニーは、ロサンゼルスの自宅で家族や友人に囲まれて亡くなった」とのことで、しばらくの間、病気療養中だったことも明らかになった。ポワチエには、6人の娘がいたが、1人は2018年に死去している。
バハマ人の両親を持ち、出稼ぎ先の米マイアミで生まれたバハマ・アフリカ系アメリカ人のポワチエは、生活のため15歳でバハマから渡米。17歳でニューヨークに移住し、アルバイトを転々としながら、アメリカ軍に入隊。除隊後は、まだ黒人差別がはびこる米国で俳優を志し、1950年に銀幕デビューを果たす。8年後には、『手錠のまゝの脱獄』(58)で英国アカデミー賞外国男優賞を受賞し、着々とキャリアを積み重ねてきた。
人種を問わず多くの俳優らから親しまれてきたポワチエの、黒人俳優としてハリウッドの壁を打ち破った功績は大きく、1974年には大英帝国勲章、2009年には当時のオバマ米大統領から民間人に与えられる最高の栄誉「自由勲章」を贈られている。オバマ元大統領夫妻、クリントン元米大統領、アップル社CEOのティム・クック、オプラ・ウィンフリー、ウーピー・ゴールドバーグ、デンゼル・ワシントン、ハル・ベリー、リース・ウィザースプーンらが続々と、SNSで唯一無二の才能を持ったポワチエに哀悼の意を表し、ハリウッドの先駆者の死を悼んだ。
なかでも同じく94歳の米黒人レジェンド歌手であるハリー・ベラフォンテは、「80年近い歳月を、共に闘い、笑い、泣き、できる限りの茶目っ気をもって生きてきた。彼は、この世界を少しでも良くしようとしてきた本当の意味での私の兄弟でありパートナーだった。そして私がこうしていられるのは、彼のおかげにほかならない」と語ったと「Page Six」が報じている。
またべラフォンテの娘は、「私の父にとってポワチエは本当の兄弟以上の関係であり、黒人の人権のために戦ってきた同志。おそらくマーティン・ルーサー・キング牧師の死以上に衝撃を受けており、打ちひしがれている」と「People」にコメントしており、悲しみの深さがうかがえる。
1967年にグローマンズ・チャイニーズ・シアターの前に刻まれた手形や足型、サインには多くの人々が訪れると共に、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムには花が手向けられた。
文/JUNKO