堤真一、声優初挑戦の『鹿の王』に大苦戦「いまこの時期に観るべき作品」
『もののけ姫』(97)や『千と千尋の神隠し』(01)の異才アニメーター、安藤雅司の監督デビュー作『鹿の王 ユナと約束の旅』(2月4日公開)の完成披露試写会が、1月17日にイイノホールで開催。主人公である孤独な戦士ヴァン役で、声優に初挑戦した堤真一は「二度とやりたくないくらい難しかったです」と告白した。
原作は、2015年度本屋大賞を受賞した上橋菜穂子のベストセラー小説で、Production I.Gが手掛けた本作は、人類と謎の病との壮大な闘いを描く感動巨編。謎の病の治療法を探す天才医師ホッサル役を竹内が、抗体を持つ者を追う暗殺者サエ役を杏が演じた。
最初に、本日、53歳の誕生日ということで、3人から祝われた安藤監督は「ちょうどこの映画の公開も決まり、映画の誕生日ってことも含めて、こんなめでたい日を同じ日に迎えられてうれしいです」と喜びを口にした。
堤は「僕は原作のファンだったんですが、実写化というか、いろんな意味でアニメ化するにしても壮大すぎて難しいなと思っていましたが、お話をいただいてうれしかったです。でも、アテレコの経験がなかったので、もしやるなら何回NGを出してもいいような環境でお願いしますと言いました」とアフレコ時を振り返った。
また、堤は「知り合いに落合福嗣くんというのがいまして。その方が声優をやっていますが、いかに難しいかと。僕には無理やなと思い、あまりご迷惑をおかけするならお断りしたほうがいいかなとも思いました」と恐縮した。
竹内もアニメの声優は初挑戦となったそうで「あんなにすてきなカッコいい役を僕に?と、びっくりしまして。アニメーションの声をやるなんて自分とは無縁だと思っていたので、自分でいいのかなと思いました。また、相手役をしてくださった声優さんがものすごく上手くて完璧で、すごく悔しくて。監督に寄り添っていただき、何テイクも重ねていただきました」と安藤監督に感謝した。
杏は「『鹿の王』が本屋大賞を受賞した時、上橋先生と対談をさせていただいたので、まさか数年後に役をいただけるとは。これはまず、上橋先生に聞かないとと思い、『私で大丈夫でしょうか?』とお電話させていただきました」と心配したとか。続いて「鹿の王」の見どころについて「ファンタジー小説だけど、政治や医学と、普段ドラマでもなかなか扱わないテーマをファンタジーで描くことにより、私たちがいま生きている世界が浮き彫りになるような気がしています」と語った。
安藤は堤たち3人について「みなさん、本当にすばらしい」と太鼓判を押し「録音ブースで聴いていて、いい声だなと。こっちも堪能させていただきました。お三方とも誠実で謙虚で、真摯に作品に取り組んでいるのが伝わってきました」と言うと、堤は「救われます」と胸をなでおろした。
また、劇中の印象的なシーンについて、堤が「鹿」と、竹内が「ピュイカ(劇中に登場する鹿)」と、杏が鹿のイラストを書いたフリップを披露。全員が鹿だったということで、杏が「鹿しかない」とだじゃれを言うと、全員がうなずく。
特に杏は家族全員が鹿好きだそうで「子どもたちが特に鹿が大好きで、ぬいぐるみが何個もあるし、服のデザインも探して買ってます。公開されたらぜひ子どもたちと映画を観にいこうかなと」と鹿愛を炸裂させた。
堤は最後に「2度も公開を延期しましたが、ようやく公開されることになりました。いまのこの時期に観るべき作品だと思っています。この状況だからこそ、明るいものをもらえるし、力をもらえるのではないかと。それぞれの立場でそれぞれが共感できる役があるし、ぜひより多くの方に観ていただきたいです」と力強く締めくくった。
取材・文/山崎伸子