考察が考察を呼ぶ『真夜中乙女戦争』…キャストの裏話や撮影秘話に発見がいっぱい!なコメンタリー上映を体験
現在公開中の映画『真夜中乙女戦争』。2月1日より永瀬廉、池田エライザ、柄本佑、二宮健監督が作品を徹底解説するコメンタリー上映がスタートしたことで、SNSがさらなる盛り上がりを見せている。1月29日に開催された大ヒット御礼舞台挨拶では、二宮監督も「連日『私の解釈を発表します』といったメッセージが届き、十人十色の解釈を聞ける状態が非常に幸せです」と語っていたが、コメンタリー上映を観てみると「あのシーンはそういう意図で撮影されていたのか!」と、永瀬たち演者も驚きを口にしていた。
原作は、若者からの支持率が高い新鋭作家Fの小説。永瀬が演じるのは、上京して1人暮らしを始めた大学生の“私”。彼は奨学金で入学した苦学生で、友達も恋人もできず鬱屈とした日々を送っていた。そんな“私”が「かくれんぼ同好会」という名のサークルで知り合った、美しく聡明な“先輩”(池田エライザ)に惹かれていく。また、カリスマ性にあふれた謎の男“黒服”(柄本佑)との出会いによって“私”の学生生活は一変し、やがて“黒服”が提案する過激な東京破壊計画に加担していく…。
コメンタリー上映は、スマートフォンアプリ「HELLO! MOVIE」を事前にダウンロードし、⾳声ガイドより「【コメンタリー版】真夜中⼄⼥戦争」のデータをダウンロード。映画館内で上映直前にアプリを起動すれば、アプリが本編⾳声と同期し、イヤホンを通じて副⾳声が再⽣できるというものだ。
SNSでは「終始最悪だけど最高だった。何度も観たい」「観終わったあと、抱いた感情を表す言葉が見つからない」「美しくてかっこよくて、そしてとても儚くて、涙が止まらなかった」「予想外の“最悪のハッピーエンド”で余韻が凄かったです。友人と見終わったあとに誰とも話したことのないような会話をして新鮮でした」などの熱い感想が寄せられてきた本作。永瀬もコメント欄をよくチェックしているそうで、舞台挨拶では「この作品を理解して、楽しもうとしてくださっているのがうれしいです」と喜んでいた。
メガホンをとったのは『チワワちゃん』(19)や『とんかつDJアゲ太郎』(20)などで知られる二宮監督だが、改めてコメンタリー上映での解説を聞くと、映像や音楽に対して細部までこだわり抜いたことが伺える。例えば、東京タワーの凝ったファーストカットについて永瀬は「『真夜中乙女戦争』の始まり方としては、これ以上にないんじゃないかと思いました」とかなりお気に入りの様子だった。
また、夜景がぐるりと回転するシーンについて柄本が「どういう意味があるんですか?」と尋ねると、二宮監督が「みんなが見たことのあるものが見たことのないものに見えるというのが、この映画の一つのテーマだと思った。だからここから鏡合わせの別の世界に入る」と解説。それを受けて、永瀬たちは「なるほど!」とうなるシーンもあるなど、キャスト陣も初めて知るエピソードも明かされた。
原作者のF自身もお墨付きの映画だが、なんと先生自身も6回以上は鑑賞されたそうで、舞台挨拶では「悪戯好きな監督は様々な仕掛けをこの映画に盛り込みました」というメッセージを寄せていた。確かにリピートして鑑賞してみると、いろんな小ネタも見つけられるので、いろんな答え合わせを楽しめそうだ。
ちなみに、今回のコメンタリー上映では以下のようなことがわかるのだとか。
●オープニングが東京タワーの足元から始まる理由
●反転、回転のカメラワークが示唆するもの
●オーケストラのチューニング音が示すもの
●『吸血鬼ノスフェラトゥ』を観る理由
●“黒服”「あの猿はお前だよ」&ラブホテルの絵の意味するところ
●"先輩"の送るLINEスタンプの意味
●「Tomorrow is Another Day!」のビラの意味
●「不要不急の外出を控えて自分のために時間を使え」の意味
●"黒服"のダンスシーン誕生秘話
●「赤い帽子の子探し」に込めた二宮監督の思い
●"黒服"がスマホを投げ捨てた理由
●各シーンの撮影技法
●永瀬廉、池田エライザ、柄本佑によるラストの解釈
なかでも永瀬たちが気持ちを作るのが難しかったシーンや、実は意外な撮影の仕方をしていたシーン、撮影でかなり粘ったという名シーンの解説では、いろんな発見があった。特に、ネタバレ厳禁であるラストの解釈は、観る人それぞれに委ねられていると思うが、永瀬たちの捉え方も三者三様で、このコメントだけでも聞く価値は大アリだ。リピーターの方々には、ぜひコメンタリー上映を猛プッシュしたい!
文/山崎伸子