イッヌが走り、画面にはスタンプ!まさかの大バズ『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』プロデューサーを直撃「実は監督に内緒で…」
「マジで草しか生えんかった」「終始イッヌパーティーだった」…。先日、ホラー映画が苦手だというあるユーザーがTwitterに投稿した一本の映画の感想が、5.1万リツイート・18.3万いいね(2月11日現在)を突破する大反響を巻き起こした。その映画とは、「呪怨」シリーズの清水崇監督が手掛けたヒット作『犬鳴村』(20)のアナザーバージョンとして製作された、『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』(20)だ。
2020年2月に公開され観客動員数100万人を突破した『犬鳴村』は、福岡県に実在する心霊スポット“犬鳴トンネル”に伝わるウワサをモチーフに、三吉彩花演じる主人公が周囲で次々と起こる不可解な現象の謎を突き止めるため、決して踏み込んではいけない場所へと向かう姿を描く。『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』では、そのストーリーはそのままに、劇中の恐怖シーンにかわいいイヌを登場させたり、ユニークな効果音やピンクのキラキラ、挙句の果てには画面狭しとスタンプを押しまくったりと、やりたい放題に恐怖を緩和する加工が施されている。
本来であれば“恐怖”を売りにするホラー映画で、なぜこのような映画が作られてしまったのか。MOVIE WALKER PRESS編集部は、本作を企画したプロデューサーにコンタクトをとることに成功。「どうして…」という我々の想いを届けるべく、怒られる覚悟で直撃を試みた。
「最初は清水監督に内緒で作り始めたもので…」
我々の直撃を意外にも暖かく迎えてくれたのは、『恐怖回避ばーじょん』を企画した東映株式会社企画調整部の高橋大典氏。自身がプロデューサーを務めた「恐怖の村」シリーズの最新作『牛首村』(2月18日公開)が控えるこのタイミングで思わぬ話題になったことには、「なにかの呪いなのか、それともなにか運命的なものなのか…。正直びっくりしました」と苦笑気味。そして声を潜め、「実はこの『恐怖回避ばーじょん』、最初は清水監督に内緒で作り始めたものだったんです…」と衝撃的な事実を口にする。
「監督にお見せした時には『怒られるかな…?』と内心ヒヤヒヤしながらだったのですが、幸いにも清水監督はコメディもお好きな方ですし、自身の作品にツッコミを入れることも厭わない広い心の持ち主でしたので助かりました(笑)」と、果敢なチャレンジで作られた作品であったことを明かす。
そんな危ない橋を渡りながらも『恐怖回避ばーじょん』を制作した背景には、ホラー映画のプロデューサーならではの深い悩みがあったという。「『犬鳴村』の公開前に調査を行なったところ、ホラー映画が苦手だという人があまりにも多かったのです。そんな人たちにどうやったらこの映画を観にきてもらえるのか。宣伝をするうえでそれが大きなテーマになり、特に恐怖描写の多い冒頭7分の本編映像をWeb上で公開することにしました。その際に、ホラーが苦手な人にも興味を持ってもらおうと冒頭の『恐怖回避ばーじょん』を作ることにしたのです」。
「怖がること以外のホラー映画の楽しみ方も知ってもらえたら」
宣伝の一環として始めたものが、なぜ全編にまで及ぶことになったのだろうか?「公開した冒頭映像がバズりにバズり、おかげさまで本編の『犬鳴村』も大ヒットを記録しました。清水監督が『また(恐怖回避ばーじょんを)やるときはぜひ一緒に』と言ってくれたので、調子に乗って全編制作することにしました」と、長編化決定となった経緯が語られる。
「清水監督の少年のようないたずら心、時に幼稚性あふれる演出が満載のものに仕上がったと思います。これを観ると、元となった映画がどんなものなのか気になっちゃうような仕掛けを取り入れています」と手応えをのぞかせる高橋プロデューサー。
「劇場公開時には、ホラー嫌いな方から『これなら観られる!』と喜びの声もいただきました。依然としてホラーが苦手で絶対に観ないと断言している方も多いので、この『恐怖回避ばーじょん』で怖がること以外のホラー映画の楽しみ方も知ってもらえたらいいなと思っています。そしてホラー映画の魅力に触れた方には『牛首村』を劇場で観ることをおすすめします!」と、スムーズな流れで告知を突っ込んでくるあたりは、流石というべきか…。
『牛首村』は、富山県に実在する心霊スポットを舞台に、ある忌まわしい風習に触れてしまう高校生の姿が描かれる。予告映像を観る限り、さぞかし『犬鳴村』を超える恐怖が待ち受けていることが予感できる。「今回は“犬”ではなく“牛”…。同じ動物が登場するのできっと安心して観ていただけることでしょう」と謎の自信を見せる。「『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』ではかわいい犬たちが怖さをなくしてくれましたので、『牛首村』で怖くてどうしようもない時には、かわいい子牛のイラストを思い浮かべてみると“恐怖回避”できるかもしれませんね」とニンマリ。
さらに、「もちろん皆様のご要望が多ければ『牛首村 恐怖回避ばーじょん』を製作することも視野に入れています」とまさかの宣言。「今回出演していただいた高橋文哉くんは『牛首村』が人生初ホラー映画になったと言っていましたので、ホラーが苦手な方も『牛首村』をホラー初体験作品にしてみてはいかがでしょうか。『犬鳴村』を超えた『牛首村』を、是非映画館でご覧ください!」と呼びかけた。
イッヌは出てこないが牛は出る。きっと我々の想像を超える仕上がりであろう『牛首村』の公開、そして“恐怖回避ばーじょん”の制作を、密かな楽しみと共に待ちたい。
取材/編集部 構成・文/久保田 和馬
※Koki,の「o」はマクロン付きの「o」が正式表記