『チック、チック…ブーン!』でオスカー初受賞なるか?演技派アンドリュー・ガーフィールドの活躍から目が離せない
『ハクソー・リッジ』でオスカー候補&舞台でも存在感を発揮!
“マスクを脱いだ”ガーフィールドは、重厚な歴史ドラマや社会派作品で、果敢に難役に挑戦していく。遠藤周作原作のマーティン・スコセッシ監督作『沈黙-サイレンス-』(16)で、異国の地、日本で信仰心を試される宣教師を体現。続いて同年、メル・ギブソン監督によるハードな戦争ドラマ『ハクソー・リッジ』では、第二次世界大戦の沖縄戦で、“殺さず”の信念を貫いた英雄を演じ切り、アカデミー賞主演男優賞へのノミネートを果たした。
さらに、演劇界での活躍も目覚ましく、1980年代のNYでエイズを患う同性愛者の苦悩を描いた舞台「エンジェルス・イン・アメリカ」(17・二部作)で主演を務め、新境地を開拓。今作で演劇界最高の名誉である、トニー賞の演劇主演男優賞に輝いている。
賞レースで高く評価される一方で、失踪した想い人を求めて都市伝説ヲタクの青年が奔走するミステリー『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18)、“バズる”を求めてYouTuberが暴走していく『メインストリーム』(21)といったユニークな作品にも出演。「アメスパ」以降もガーフィールドは、確かな存在感を示して観客を唸らせてきた。
歌って踊るガーフィールドの感情の揺れ動きが胸に刺さる『tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!』
そんなガーフィールドの魅力が堪能できる作品が『tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!』で、彼にとって初のミュージカル映画になる。本作は、傑作ミュージカル「RENT」を生みだした、夭逝の作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝的ミュージカルを映画化した青春ドラマ。舞台は1990年のマンハッタン。30歳の誕生日を目前に控えた作曲家志望のジョナサンが、成功を夢見て創作活動に猛進する姿を描いていく。
なんといっても見どころは、ガーフィールドが繰り出すパワフルな歌とダンス!夢追い人が集まるホームパーティや、バイト先の街角ダイナー、憧れの高級マンションなどで展開されるミュージカルシーンは、ノリの良いポップソングが満載。昼夜作曲に追われるあまり、恋人や仲間たちとすれ違っていく主人公の葛藤する心情を、ガーフィールドは伸びやかな歌声とクルクル変わる表情、そしてダイナミックな踊りによって全身全霊で表現しているのだ。さらに、見事なピアノの弾き語りまで披露するのだから驚かされる!
これまで、まっすぐで純粋な青年役を多く演じてきたガーフィールドだからこそ、青春に付きものの“若者の焦燥感”を音楽に乗せて描出できたのではないだろうか。前述の通り、本作で“アカデミー賞の前哨戦”と言われているゴールデン・グローブ賞主演男優賞を獲得し、さらに、2度目のアカデミー賞主演男優賞候補にも選ばれるなど、その演技は大勢の心を打ち、高く評価されている。
ちなみに、あるインタビューで「アメイジング・スパイダーマン」第3弾への意欲を問われたガーフィールドは、「もちろん!」とリベンジする気満々。また、ディズニープラスでは、ジェシカ・チャステインとW主演した伝記ドラマ『タミー・フェイの瞳』が配信されたばかり。これからもますます、アンドリュー・ガーフィールドから目が離せない!
文/水越小夜子