夫婦愛か、ホラーか、コメディか?斬新な“不倫映画”『先生、私の隣に座っていただけませんか?』が仕掛ける巧みな罠

コラム

夫婦愛か、ホラーか、コメディか?斬新な“不倫映画”『先生、私の隣に座っていただけませんか?』が仕掛ける巧みな罠

現在放送中のフジテレビ系ドラマ「ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇」で主演を務める黒木華と、『真夜中乙女戦争』(公開中)をはじめ映画やドラマに引っ張りだこの柄本佑がダブル主演を務めた『先生、私の隣に座っていただけませんか?』のBlu-ray&DVDが発売中。“不倫”を題材にした映画はこれまで数多く作られてきたが、本作はそのどれにも似ていない斬新な語り口で、一度観ると何度も観直したくなる中毒性の高い逸品だ。

物語の主人公は結婚5年目を迎えた漫画家夫婦の早川佐和子(黒木)と早川俊夫(柄本)。何年も新作を描けずにアシスタントとして佐和子の仕事を支えている俊夫は、佐和子の担当編集者である千佳(奈緒)と不倫関係真っただなか。佐和子もそれを勘づいていた…。ある時、佐和子の母が事故に遭ったとの知らせを受け、サポートのため佐和子と俊夫は車がないと生活がままならない不便な地域にある佐和子の実家で生活を始める。

妻が描いたネームを見て、不倫がバレていると焦り始める夫の俊夫
妻が描いたネームを見て、不倫がバレていると焦り始める夫の俊夫[c]2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会

教習所に通いながら新しい連載漫画の企画を練っていた佐和子は、若い教官の新谷(金子大地)と出会い新作のネームを描き始める。程なくして机の上に置かれたネームを見てしまった俊夫は目を疑う。そこに描かれていたのは、俊夫と千佳の不倫と、佐和子と新谷の淡い恋模様だった。不倫がバレてしまったのではないかという不安と、嫉妬心に燃える俊夫は精神的に追い詰められていき、やがて現実と漫画の境界が曖昧になっていくことに…。

【写真を見る】“不倫映画”の概念を覆す!観客を迷宮へと誘う本作の魅力とは?
【写真を見る】“不倫映画”の概念を覆す!観客を迷宮へと誘う本作の魅力とは?[c]2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会

「才能ある未来のクリエイターを発掘する」という意図で気鋭のクリエイターから作品企画を募り、その実現を後押ししてきた「TSUTAYA CREATOR'S PROGRAM」。これまで『嘘を愛する女』(18)や『ルームロンダリング』(18)、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(19)など意欲的な作品が次々輩出されてきた同コンペティションで、2018年の準グランプリに輝いたのが本作だ。コミカルだけどどこか恐ろしい、恐ろしいのだけれどなぜか小気味良い。そんな不思議な感覚を味わえるのは、俊夫が味わうような“現実”と“フィクション”の曖昧な境界へと観客を誘い込む巧妙な作品構造にあるのではないだろうか。


■『先生、私の隣に座っていただけませんか?』Blu-ray&DVD発売中
価格:5,170円(税込)、4,180円(税込)
販売元: KADOKAWA/角川書店

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