声優・かかずゆみ&キャラデザ・丸山宏一が紐解く、しずかちゃんの“普遍的ヒロイン力”!かわいく描くコツも伝授
「しずかをかわいく描くコツは、あまり前髪をクルンとさせないようにして…」(丸山)
――丸山さんは、今回しずかちゃんの見どころだと思うのはどのような場面でしょうか。
「食べ物を頬張ったパピの口元を拭いてあげたり、パピの面倒を見てあげたりと、映画の序盤ではお姉さんのようなしずかを見ることができます。そして物語が進むごとに、ピリカ星の反乱軍にさらわれて、しずかは怖い目にあってしまう。それでもみんなを助けるために真っ先に出陣しようとするしずかは、本当にかっこいいですよね。その戦いに出る場面は、僕自身もとても気に入っています」
――表現の部分で特にご苦労されたような場面はありましたか?
丸山「今回、山口晋監督にずっと言われていたのは、しずかとのび太の眉毛の表現で。『微妙な困り顔はあっても、漢字の八の字のような眉毛になる表情は使わないでくれ』と言われていました。山口監督は、のび太としずかについて“嫌な目にあっても露骨に顔には出さない”という解釈をしています。“嫌がっているようには見せたくない”という意図のもと、そういった演出をされています。あとは、『とにかくしずかちゃんをかわいく描いてくれ』とも言われましたね(笑)」
かかず「うれしいです!」
――しずかちゃんが憧れの牛乳風呂に入るシーンもとてもかわいかったです。
丸山「あのシーンもそうですが、ほかのスタッフもみんな、しずかをいつもとても丁寧に描いてくれます。原画の方、作画監督もみんな力が入っている(笑)。美形のキャラは、線が少しでもズレると美形ではなくなってしまうので、みんな気を使って描いてくれています」
かかず「私たちも時々、スタジオでキャラクターの似顔絵を描いたりするんです。するとみんな『しずかちゃんが一番難しい』と言うんです!眉毛一つ違うだけでも、全然しずかにならない。私はいつも輪郭と鼻、口を頑張って描いても、目のバランスが絶対にうまくいかないんです。あと、おさげの角度も難しい!コツが知りたいです」
――しずかちゃんをかわいく描くコツ、知りたいですね!
丸山「おさげは、45度くらいの角度で下がっている感じがいいですね。目は、白目に対して黒目をどこに描くかでだいぶ変わってきます。白目の真ん中に黒目を描いてしまうと、無限の彼方を見ているような目になってしまいます。若干、近くを見ているような感じで、ちょっとだけ寄り目にするといいですね。あと前髪はあまりクルンとさせずに、素直にサッと下ろす感じが理想です。というのも、藤子・F・不二雄先生が『あまり前髪をカールさせないでほしい』とアニメスタッフにお願いをしていたそうなんです。なのでそこはとても意識していますね。また斜めを向いた時にアゴが出ないように、少しアゴを内側に引くようにしています。そういったことを意識して描くと、似てくるかもしれません」
かかず「藤子・F・不二雄先生が『前髪をカールしすぎないように』とおっしゃっていたのは、あまりぶりっ子なかわいさにしない…ということなのかなと感じたりもして。実は私も、しずかを演じる時に、ぶりっ子な演技にはしないということを心掛けているんです」
丸山「それはものすごく正しい解釈だと思います。原作の時点から、しずかって一応は女の子らしく振る舞っていますが、とてもわんぱくな子ですよね。男の子と遊んだり、木登りがしたかったり。でも普段はピアノや習い事をやって、女の子らしくあろうとしている子なんだと思います」
かかず「考え方が一致して、とてもうれしいです!」
「しずかの持つ普遍的な魅力は、正義感のあるところ」(かかず)
――1969年から「ドラえもん」の連載がスタートして50年以上が経ったいまもなお、しずかちゃんは世代を超えて愛され続けています。しずかちゃんには絶対的なヒロイン力があるように感じますが、お2人はしずかちゃんの普遍的な魅力についてどのように感じていますか?
かかず「ヒロインの位置付けではあるけれど、女の子、女の子していないところが、誰からも愛される秘訣なのかなと思っています。そしてなんといっても正義感があるところ!誰かがケンカをしていたら止めに入るし、『私はこう思うわ』としっかりと口にできる女の子です。例えば『のび太さんは一緒に勉強をするタイプじゃないの』と言ってしまうようなところもありますが(笑)、これもすべて自分のなかの正義から出ている言葉。ピュアだし、そこに一切の嫌味はありません。
先代の野村道子さんが演じていたしずかからも、そういった魅力が感じられます。2005年にメインキャラクターの声優交代があり、絵柄も変わりました。当初は『このかわいい絵柄に、よりかわいい声を乗せたら、ファンの方が離れてしまうんじゃないか』という不安もあって…。10年くらいはずっと『これでいいのかな』と悩み続けていたように思います。2005年からの『ドラえもん』を観て育った方が大人になり、やっと以前の『ドラえもん』と同じように『これもドラえもんだよね』と言っていただけるようになってきたのかなと思います」
丸山「しずかはいろいろな面を持っていますよね。負けん気の強い部分もあれば、家ではぐうたらしていたり(笑)。嫌いだけれどピアノを習っていたり、下手だけどバイオリンを弾いていたりもする。そういった多面性みたいなものがあり、人格がとてもリアルだなと思います。言葉遣いは丁寧でおしとやかに話そうとしていても、怒ると怖いですしね(笑)。目が離せない魅力があるなと思います」