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ウクライナの国花“ひまわり”。1970年の名作映画『ひまわり』が突きつける、痛ましい歴史の記憶

コラム

ウクライナの国花“ひまわり”。1970年の名作映画『ひまわり』が突きつける、痛ましい歴史の記憶

ひまわりの花に込められた平和と反戦へのメッセージ

ひまわりの花とウクライナの関係は、この『ひまわり』以外の映画にも登場する。例えば2005年の『僕の大事なコレクション』。イライジャ・ウッドが主演、俳優のリーヴ・シュライバーが監督した一作で、アメリカに住むユダヤ系の青年が、祖父の故郷であるウクライナへ向かう物語だ。うまく英語が話せない通訳とその祖父、愛犬とともにウクライナでの珍道中が描かれるが、やはり戦争の悲しい過去が浮き彫りになっていく。そして主人公がウクライナで目にするのが、一面のひまわり畑である(諸事情でウクライナのシーンはチェコで撮影された)。『ひまわり』と同じく、人との出会いと別れが予期せぬ感動を誘う、隠れた名作だ。

イライジャ・ウッド主演の『僕の大事なコレクション』
イライジャ・ウッド主演の『僕の大事なコレクション』写真:EVERETT/アフロ

こうしてウクライナの象徴となっている、ひまわりの花は、ロシアの軍事侵攻への抗議として世界各地で人々が祈りを捧げる際に、あちこちに飾られることになった。映画『ひまわり』が、戦争の虚しさを半世紀以上にわたって訴えたように、ひまわりの花に反戦への想いが込められているのだ。

戦場へ向かうアントニオを見送るジョバンナ(『ひまわり』)
戦場へ向かうアントニオを見送るジョバンナ(『ひまわり』)写真:EVERETT/アフロ

ウクライナへの支援の心も込めて、現在日本では、映像や音響をハイクオリティで届ける『ひまわり 50周年HDレストア版』が劇場公開中。「いまこそ観るべき映画」として、その上映劇場の輪が広がりをみせている。美しいひまわり畑をスクリーンで観た時、この光景がいつまでもウクライナに残ってほしいと願いつつ、どんなに深い人と人の絆も戦争が引き裂いてしまうという『ひまわり』の強烈なメッセージに心が締めつけられるのは間違いない。

文/斉藤博昭

※記事初出時、事実誤認を含む表記がありました。訂正してお詫びいたします。

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