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ラブストーリーから青春ドラマ、ゾンビモノまで!物語を彩る"影の主役"韓国ドラマOST事情

コラム 2022/4/16 8:30

ラブストーリーから青春ドラマ、ゾンビモノまで!物語を彩る"影の主役"韓国ドラマOST事情

Netflixで4月9日から配信される新ドラマシリーズ「私たちのブルース」は、済州島を舞台に、イ・ビョンホンハン・ジミンシン・ミナキム・ウビンら豪華キャストで送るオムニバスドラマだ。本作は、14人の登場人物たちによる各話が少しずつ繋がり合う構成だという。そもそもブルースとは、悲しみや憂鬱をベースにあらゆる感情を込めた曲調の音楽を指す。「私たちのブルース」は、登場人物たちの人生にまつわるほろ苦さや哀しみ、喜びを映し出すそれぞれのエピソードが合奏のように響き合う作品なのではないかと、期待が高まる。

【写真を見る】BTSのVは親友チェ・ウシク主演の「その年、私たちは」のOST「Christmas Tree」を担当した
【写真を見る】BTSのVは親友チェ・ウシク主演の「その年、私たちは」のOST「Christmas Tree」を担当したNetflix

そんな今期注目のドラマのOSTに、BTSのJIMINが参加する。釜山芸術高等学校舞踊科へ首席で入学するほどダンスパフォーマンスに優れている彼は、グループ内ではリードボーカルとメインダンサーのポジションだ。BTSは過去にVが親友チェ・ウシク主演の「その年、私たちは」(配信中)の一曲「Christmas Tree」を、JINがチュ・ジフンチョン・ジヒョンによる特別企画ドラマ「智異山」(21)のメインテーマを担当するなど、メンバーがOSTに参加する機会が増えている。JIMINがドラマのOSTを歌うのは今回が初めてだ。音域が広く、低音と高音を自在に使い分けることで定評のある彼がどんな歌声を披露してくれるのか、実に待ち遠しい。

「社内お見合い」「サウンドトラック #1」ラブストーリーを切なく盛り上げるOST

「サウンドトラック #1」は、劇中ソングライターのウンス(ハン・ソヒ)と写真家のソヌ(パク・ヒョンシク)が作り上げた曲をそのままOSTとして使っている
「サウンドトラック #1」は、劇中ソングライターのウンス(ハン・ソヒ)と写真家のソヌ(パク・ヒョンシク)が作り上げた曲をそのままOSTとして使っているDisney+

日本で「サントラ」と呼ばれる挿入歌やBGMは、ほとんどの場合ドラマの放送で耳にする程度だが、韓国ではOST(Original Sound Track)という名で親しまれ、楽曲としての需要が高い。たとえば平凡な会社員ハリ(キム・セジョン)がひょんなことから同じ社内のCEOテム(アン・ヒョソプ)と秘密の恋に落ちる「社内お見合い」のOSTで、人気男性デュオ・メロマンスが手がけた「恋したみたいだ(原題:사랑인가 봐)」は、韓国政府公認の音楽チャート「GAON CHART」3月26日付のストリーミングおよびBGMランキング10位圏内と好調だ。彼らの甘い歌声は、ハリとテムがひそかに育む恋愛模様とリンクする。本作は日本のNetflixランキングでもトップクラスのドラマだが、その人気を楽曲が後押ししているようだ。

「サウンドトラック #1」は、ソングライターのウンス(ハン・ソヒ)が、親友である写真家のソヌ(パク・ヒョンシク)に片思いをテーマにした曲作りの手助けをしてもらうため、2週間一つ屋根の下で生活することで芽生えた想いに揺れるさまが、様々な音楽で表現されていく作品だ。ウンスは片思いの曲の依頼をきっかけに、何でも話せる仲のソヌとともに歌詞を共作していくうち、次第に彼が誰かに片思いをしていることに気づき始める。二人で作り上げられた曲をドラマの中でそのままOSTとして使うなど、ロマンスミュージックシネマと銘打っただけあって音楽を物語の構成として見事に組み込んでいる。放送前から先行して音源を発表し、SUPER JUNIORのキュヒョンやNCTドヨン、パク・ボラム、Davichi、キム・ジェファンといった韓国屈指のK-POPアーティストが参加するなど、「サウンドトラック #1」はOSTに強いこだわりがある。中でも新進気鋭のプロデューサーでインディーズデュオ・詩的話者のシンガーソングライターDOKOによるバラード曲「사랑은 말로 표현하는게 아니래요(愛は言葉で表現するものではないそうです)」(キュヒョン)は、"愛は言葉で表現するものではない"という歌詞が語りかけるようにリフレインし、友情が壊れることを恐れて自身の気持ちを隠し続けてきたソヌの心情をフォローする。

本作でDOKOは他にも女性デュオ・Davichiのハーモニーが美しい「あなたの優しい心が私を傷つけます(原題:소녀 같은 맘을 가진 그댈 생각하면 아파요)」、若き作曲家イ・ギファンとコラボレーションした「私たちはどんな星よりも輝くよ(原題:우린 어떠한 별보다 빛날 거야)」も手がけており、もともとバラードを得意としてきた彼の手腕が遺憾なく発揮されている。また「Love Love Love」を歌うソビンは、Mnetオーディション番組「キャプテン」でTOP7にランクインし、「サウンドトラック#1」音源で初めて活動を開始した期待の新人だ。こうして集結したフレッシュな才能による楽曲はクオリティも抜群なので、彼らの歌として聴くだけでも充分胸に響いてくるが、OSTとして使われることでウンスとソヌの言葉で言い表せない感情がメロディーとなり、観ている私たちの心と共鳴し合う。果たして二人は自分たちの素直な気持ちに向き合っていくのか、切なくも暖かいストーリー展開を予感させてくれる。


青春ドラマ「二十五、二十一」の曲「With」が若者へエールを送る

1998年を舞台に、ヒド(キム・テリ)とイジン(ナム・ジュヒョク)が夢と現実の狭間でともに成長していく姿を描いている「二十五、二十一」
1998年を舞台に、ヒド(キム・テリ)とイジン(ナム・ジュヒョク)が夢と現実の狭間でともに成長していく姿を描いている「二十五、二十一」Netflix

青春ドラマにも、OSTは欠かせない。「二十五、二十一」(配信中)は、韓国がIMF経済危機に陥る1998年を舞台に、明るく活発なフェンシング部の高校生ヒド(キム・テリ)と、家計のためにアルバイトに勤しむイジン(ナム・ジュヒョク)と出逢い、夢と現実の狭間でともに成長しながら距離を縮ませていく。社会が若者を挫折へと追いやるなかで、それでも希望を掴もうとしていく姿が胸を打つドラマだが、とにかく劇中に登場するテヤン高校の先輩・後輩5人による「With」に聞き惚れてしまう。インディーズバンド・オクス写真館のノ・ギョンボが作詞・作曲を担当したこの曲は、キム・テリの透明感、ナム・ジュヒョクののびやかさを主旋律に、共演者であるボナ、チェ・ヒョヌク、イ・ジュミョンとの声の饗宴がより感動をかき立てるのだ。"ひとりじゃない"と歌い上げる5人の絆を象徴するとともに、今現在を生きている若者の背中を押すエールソングになっている。音源の収益金が寄付されるというのも素晴らしい試みだ。

映画音楽の名匠が手がけた「キングダム」シーズン2のOST

ゾンビを倒す痛快さを音楽で表現した「キングダム」シーズン2
ゾンビを倒す痛快さを音楽で表現した「キングダム」シーズン2Netflix

OSTの力は、ラブストーリーはもちろんのこと、シリアスな作品でも重要なファクターとなる。たとえばゾンビ歴史劇の「キングダム」は、シーズン2で音楽監督にタルパランを抜擢し、前シリーズとは異なるイメージを付け加えた。テクノとエレクトロニカ系の音楽を得意とする彼は、元々バンドマンだった経験があり、映画『アンティーク 西洋骨董洋菓子店』(08)や『甘い人生』(04)など、多くの映画の音楽監督として名曲を生み出してきた。「キングダム2」演出のパク・インジェ監督が「シーズン2では走るゾンビに対する快感が大きかった。今回はゾンビを殺す痛快さを音楽としても表現したかった。ヘビーメタルのような音楽で暗い悪のオーラを表現してみたかった」と語るように、金属的な重い音が襲い来る死者たちの恐怖をより感じさせる。そして視聴者は、ゾンビとなった民衆に立ち向かっていく世子の戦いに強く興奮するのだ。さらにエンディングテーマは、本編とは異なるトーンの音楽が出てくる。過去に権力を振るった王族の時代が終わり、新しい「キングダム」が始まるということを予感させたかったのだという。タルパラン監督はAFTER SCHOOLのナナ主演で今年配信予定のSFミステリー「グリッジ」(22)でも音楽監督として参加しているので、こちらも見逃せない。

「梨泰院クラス」のOST「始まり」は、世界的な韓国ドラマOSTブームに火を点けた
「梨泰院クラス」のOST「始まり」は、世界的な韓国ドラマOSTブームに火を点けた写真:EVERETT/アフロ

梨泰院クラス」のOST「始まり」(Gaho)で世界的な韓国ドラマOSTブームに火を点けた音楽監督のパク・ソンイルは、「かつてOST市場は製作会社が作曲家に曲を依頼する形だった。既存の楽曲をドラマに使用することも多かった。作品自体の成功よりOST自体の商業成功に重きを置いたので、有名歌手を起用した。こういう形だと、歌の方向性とドラマの方向性が合わなくなる」と振り返る。そのため、「ミセン」(配信中)では作品自体のために書き下ろされた曲だけを使い、他のドラマと差別化できたという。確かに、本稿で紹介したどのOSTも、冒頭のワンフレーズを耳にしただけでシーンがイメージでき、ドラマに入り込んだような気分になる。韓国ドラマOSTのバラエティ豊かな楽曲とレベルの高さは、ストーリーラインやキャラクターを捉えたうえで実力派アーティストを揃えるという手法が生み出しているのだ。

知れば知るほど深い、韓国ドラマOSTの世界。これから新作をチェックするときは、音楽で選んでみるというのも楽しいのかもしれない。

文/荒井 南