瀬々敬久監督が明かす令和における「とんび」映像化の意義「親から子へ、そして孫へとバトンを渡していく」
「直接人と人がつながる大切さを見直してもらえたい」
いまは無き古きよき時代の“地域が子どもを育てる”温かさや、町の人々のつながりの大切さ。映画オリジナルの場面として、「お祭りは地域住民や共同体が一つになり、盛り上がるイベント。町自体が混然一体となって人々がつながっている象徴として、ヤスとアキラが一緒に神輿を担ぐシーンを入れました」と、こだわりのシーンを挙げる。「いまは子どもを育てるにしても、近所のおばちゃんに教えてもらうことはなく、ネットの検索に頼ってしまうような時代。そんな時代だからこそ、直接人と人がつながる大切さを見直してもらえたら。それを感じてもらうための映画だと思っています」と力を込める。
さらに映画オリジナルとして、令和までを描き込むことにもこだわったと語る。「映画としては、“いい時代だったね”ということで終わらせたくなかったんです。ヤスの生き方を現代につなげていくことで、本作の持つメッセージを孫世代まで引き継いでいく。親から子へ、そして孫へとバトンを渡していく、という意味を込めて令和のパートを作りました。言うなれば、“ある男の一生”の物語にしたかったんです」と語るように、ヤスの真っ直ぐな生き様が、観る者の胸にしっかりと刻まれる。
取材・文/折田千鶴子
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