「敵役はいかに主役を立たせられるか」『鋼の錬金術師』新田真剣佑が語る、スカー役への心構え
荒川弘の人気漫画「鋼の錬金術師」の連載20周年を記念した新プロジェクトとして公開される映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』(公開中)は、前作『鋼の錬金術師』(17)の続編として原作の最終話までを描く完結編二部作の前編。原作でも屈指の人気を誇るキャラクター、スカーを中心としたストーリーが描かれる。
本作でエド(山田涼介)と相対することになる、スカーを演じるのは新田真剣佑。すべての国家錬金術師の抹殺を誓う、復讐に燃える男を演じた新田に、「感謝の言葉しかない」と振り返る撮影現場の様子や役へのアプローチ、曽利文彦監督の印象などを語ってもらった。
「スカーは見た目だけでなく、心にも深い傷を負った役」
インタビュー時は本編映像の完成前。CGが60%ほど施されたスカーの出演部分をまとめた仮映像の感想を伝えたところ、照れ笑いで答えてくれた。「自分のシーンだけ切り抜いた映像なので、ずっと自分ばかり出ていて恥ずかしいですが、きっといい役になっていると思います」と胸を張る。本作で演じるスカーは苦悩の多いキャラクターだが、『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(21)で新田が演じた雪代縁もスカー同様、復讐心に燃えるキャラクターだったことが思い浮かぶ。「スカーはとても深いキャラクターで、パッと演じられるような役ではないと思っていました。見た目だけでなく心にも深い傷を負った役でしたので、演じる僕もかなり苦しみました。敵だけどただの悪いヤツではなく、しっかりと信念があるからこそ難しい。でも、だからこそやりがいもあります」と、役についてしみじみと振り返った。
グリーンバックでの撮影も多かった本作だが、新田自身、こういった撮影経験はかなり豊富なほうだと自負している。「グリーンバックの世界観がすごくおもしろくて。なにもないからこそテンションがあがるんですよね。ここからなにができるんだろうと想像して気持ちが高揚する感覚がたまりません。個人的にも、超人的な力を持つ人物の物語は大好きなので、想像力を膨らませて楽しく撮影していました。過去に全編グリーンバック撮影の経験もあったので、今回の撮影でも戸惑うことはありませんでした。むしろ、すごく楽しみながら撮影に臨むことができ、そんな僕の姿を見て、監督に安心したという言葉をいただいたのはすごくうれしかったです。まだ完成度は60%くらいとのことなので、これからもっとすごいものになるだろうという期待でワクワクしています」と力強く語った。
前作『鋼の錬金術師』を最初に観た時の感想を聞くと「世界レベルのCGで、びっくりしたのを覚えています。邦画でここまでの作品に出会うのは珍しいので、魅了されました。だからこそ、曽利文彦監督とこのチームでご一緒できるのはとても光栄だと思いましたし、出演が決まった時はかなり興奮しました」と教えてくれた。曽利監督と意気投合し、すでに現場では「もう一度なにかやりたいね」という話も出ていたという。
日本と海外で活動し始めた新田は、本作のスケールをどのように感じていたのだろうか。「千葉のスタジオセットは『日本じゃないみたい!』と思いました。映画の世界観をしっかり味わえるセットで、ここまで再現していただけたら演者も想像しやすいと思ったし、出演者はスタッフの皆さんに感謝していると思います。世界観を想像しやすい環境でお芝居できるのは役者にとってすごく大事なこと。日本でもこういう経験ができるなんてうれしい!」と改めて感謝の言葉を口にした。