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”しんちゃん世代”のクリエイターが語り尽くす!「クレヨンしんちゃん」への30年愛

インタビュー

”しんちゃん世代”のクリエイターが語り尽くす!「クレヨンしんちゃん」への30年愛

「『クレヨンしんちゃん』を観れば、むしろ人生について学べること、考えることが増える」(岩井)

シリーズのみならず、日本映画史に名を残した『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』
シリーズのみならず、日本映画史に名を残した『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001

――しんのすけの行動は、番組初期には親世代から問題視されていた部分もあったと思います。ですが、番組が続くなかで次第に大人にも愛され、現在では親子三代にまでファン層が広がった理由を、どのように感じていますか。

近藤「攻めた質問ですね(笑)。僕もしんちゃんのギャグを楽しんでいたけれど、実際におしりを出した記憶もなく、おもしろいアニメとして楽しんでいた気がします。いま、子どもに観せたいと言ってくださる方が多くなったのは、当時『クレヨンしんちゃん』を観ていた子どもが親になり、自分の子どもと一緒に楽しみたい、楽しさを共有したいと映画館に足を運んでくださるからだと思います。世代が一周回って、時代も見方も変わったのではないかと感じています」

30年をかけて、親子三代にまで支持を広げてきた「クレヨンしんちゃん」
30年をかけて、親子三代にまで支持を広げてきた「クレヨンしんちゃん」[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2022

久野「子どものころからアニメをあたりまえに観ていた世代が大人に、親になっていることも“観せたい”となっている理由だと思います。アニメのギャグ一つで人生が狂ったりしないという認識がようやく浸透してきたんじゃないかな」

岩井「『アニメなんて…』みたいな時代もありましたよね。『クレヨンしんちゃん』を観れば、むしろ人生について学べること、考えることが増えると思います。僕の出演が発表された時に母親から連絡が来て、“しんちゃんは下品なのでは?”と話題になった当時、ワイドショーに投書したことを思いだしたと。『観せないのではなく、観せたうえで判断すればいい』という内容だったそうで、やっぱり僕の母親だなと実感しました(笑)」

久野&近藤「あはははは」

子どもの頃から「おしゃれなアニメ」と印象を持っていたという久野
子どもの頃から「おしゃれなアニメ」と印象を持っていたという久野撮影/河内 彩

岩井「しんちゃんは別に下品なことをしようとしているのではなく、おもしろいからやっているだけ。人を楽しませるのは悪いことではないし、心の持ちようだと思うんです。僕自身、そんな母のもとで育っていますので(笑)。ビデオテープが擦り切れるくらい観たけれど、悪影響を受けた記憶は全然ないし、怒られた記憶もないです。ギャグのおもしろい作品として楽しんでいた気がします」

久野「わかります!私は子どものころ、めちゃめちゃ“しんちゃん”になりたかったです。でも同時にセーラームーンにもなりたかったので、2つのパーソナリティを両立できずに苦しんでいた記憶があります」

近藤「その両立は難しいですね」

岩井「観せないことは簡単だと思います。でも、観せたうえで、なにがよくてなにが悪いのか、その判断力をつけさせるのが親の役目だと思っています。子どもがいない僕が言っても説得力はないのですが(笑)」

「おもしろさのなかのマイルドと過激の塩梅を探っていくのが、『クレヨンしんちゃん』での仕事」(久野)

久野がバランスに苦心したという、シタゲー博士のデザイン
久野がバランスに苦心したという、シタゲー博士のデザイン

久野「作る側としては、おもしろくなる下品さってどこにあるんだろう、などとセリフとのバランスも考えながら作っています。今回の映画で登場する博士の衣装は“ギャランドゥ”がキーワードになっていて、言葉通りに描いてしまうと下品になってしまう可能性もあると思います。基本的には『クレヨンしんちゃん』として攻めていきたい気持ちはありますが、おもしろくならないのは一番悲しいこと。おもしろさのなかのマイルドと過激の塩梅を探っていくのが、『クレヨンしんちゃん』での仕事だと思っています」

近藤「『クレヨンしんちゃん』のいいところは、時代の流れを汲んでいるところだと思っています。スマホも薄型テレビも、時代の流れとともに取り入れる。特定の時代をずっと描き続けるのではなく、基本的にはずっと現代を舞台にしています。いまの子どもたちが観やすいように、時代にあわせて作っているという意味では、昔から『クレヨンしんちゃん』の作り方、制作サイドの意識は変わっていない気がしますね」

平成生まれの近藤プロデューサーは、まさに“しんちゃん世代”の作り手だ
平成生まれの近藤プロデューサーは、まさに“しんちゃん世代”の作り手だ撮影/河内 彩


――「クレヨンしんちゃん」の魅力の一つは、名曲ぞろいの主題歌だと思います。皆さんのお気に入りの主題歌を教えてください。

岩井「僕は『月灯りふんわり落ちてくる夜』。エンディングで流れるアニメーションがすごく好きです。しんちゃんとみさえ、ひまわり、シロが仕事終わりのひろしを駅まで迎えに行く帰り道で、月の光に照らされて影だけが映っているシーンがあります。ひろしとみさえと手をつないだしんちゃんが、ジャンプしたりする様子が影だけで表現しされていて。すごく仲良しな感じが出ていて、おしゃれで好きです」

本郷みつる監督時代の最高傑作と呼び声も高い『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』
本郷みつる監督時代の最高傑作と呼び声も高い『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 1996

久野「雛形あきこさんが歌っている『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』のエンディング『SIX COLORS BOY』のちょっとエッチな感じが好きです。お姉さんが年下の男の子に向けているみたいな雰囲気で、『ヘンダーランドの大冒険』の不穏さを最後に浄化させるような感じがすごく好き(笑)」

近藤「『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』でダンス☆マンさんが担当した『二中のファンタジー ~体育を休む女の子編~』が印象的です。男子の妄想をかきたてるし、声をかけたくてもかけられない男の子の感情が本当によく分かります。又兵衛の気持ちをしっかり捉えていて、あの曲だからこそ物語が終えられる、そんな気がしています」

実写映画版も制作された号泣作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』
実写映画版も制作された号泣作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002

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