”しんちゃん世代”のクリエイターが語り尽くす!「クレヨンしんちゃん」への30年愛
「しんちゃんを卒業した方にも「いまの『クレヨンしんちゃん』を観てほしい!」(近藤)
――では、「クレヨンしんちゃん」をずっと観てきた皆さんならではの、ちょっと通好みだったり、隠れた名作としてお勧めしたい劇場版を教えてください。
近藤「拙作ではありますが、2020年の『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』を観ていただきたいです。僕が初めてプロデューサーを務めた作品なのですが、自分と同じ20代後半から30代前半のしんちゃんを卒業した方たちに、“いまのクレヨンしんちゃん”を観てほしいという思いで作りました。『ラブライブ!』や『宝石の国』で知られる京極尚彦監督の作るリズムを、『映画クレヨンしんちゃん』のなかに投入したいと考えてお招きしたり、プロデューサーとしていろいろな考えを詰め込んだ作品です」
岩井「子どものころは『映画クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝』が好きでした。ワクワクしながら何度も観た記憶があります。大人になってからは『映画クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』なんかがビジュアルも含めて好きです。なかなか気持ち悪い宇宙人なのに、普通に接している野原一家ってすごいなって(笑)。友達になるし、最終的には一緒に住む…みたいに、最後はしっかり回収するのがよかったです。回想シーンでシリリの過去が描かれるのですが、アングルとか動きに(作画を担当した)久野さんっぽさを感じるアニメーションで大好きです!」
久野「気付いてくださったんですね、さすがです…!」
近藤「久々に観る方にもお勧めしたいのが、『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』。壺に入ったソースを運ぶというすごくシンプルな話です。ギャグや余白が多い映画なので、必然的にキャラクターの魅力が爆発していて、世代を問わず楽しめると思います」
久野「ファン目線ですが『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』あたりから、過去作品にとらわれずに作っていこう、みたいな流れがスタッフのなかに出てきたのではないでしょうか。制作には関わっていないですが、昨年の『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』は印象に残っています。しんちゃんが学校に行くというフォーマットも初めてで、ずっと観てきた立場で言うと、こういう『映画クレヨンしんちゃん』もあるんだなと感じました。いまの子どもたちにとっての、『しんちゃん』らしいと思える映画になった気がします」
岩井「わかります。しんちゃんはずっと5歳児だと思っていたけれど、『いつか小学校に通うんだ』とハッとしました。みさえや風間くんのお母さんが今後のことを考えているという話なので、『ここに触れていいの?時が進んじゃうじゃん!』と思ったりもしましたけれど、安心できるし、とても感動した映画です」
久野「あと、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』は、次の年の『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』の裏返しみたいな話だなと思っています。大人になってから観るとアクション仮面に熱くなる大人たちの危うさ込みでおもしろいと感じた作品です」
岩井「それから、『映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃』も印象に残る映画ですね。ずっと同じことが繰り返されるという…」
久野「強烈ですよね」
岩井「子どもは単純に“ヒーロー助けて!”と思うけれど、本作を観ると『ヒーローにだって生活があるよな』と考えたりします。ヒーローものの見方が変わるかなと思った作品です」
近藤「わかります、ヒーローに疲れていく描写はとても新鮮でしたね。最新作の『もののけニンジャ珍風伝』も、いま挙がった作品に引けを取らない自信作に仕上がっています。ハライチさんの漫才シーンや、久野さんの多岐にわたる活躍ぶりを、ぜひ映画館でご堪能いただければと思います」
――近藤プロデューサー、流石です(笑)。本日はありがとうございました!
取材・文/タナカシノブ