「TOKYO VICE」渡辺謙が語る“1990年代”東京とそこに生きる人々…「人間の精神構造や社会構造にものすごく大きな変化を及ぼした」
「看板をすべて90年代のものに変えて、エキストラ100人も動員し、久しぶりに都内で大がかりな撮影をした感覚に」
第2話以降にも、90年代の東京を感じられる渡辺の出演シーンがあるのか聞くと、「僕が参加した大がかりなシーンはね…」と思い出しながら「古いフェアレディZに乗っていたんですよ。赤のね(笑)」と再び笑顔に。「もちろん、オートマチックじゃないですよ。その赤いフェアレディZで事件現場から新宿の街をビューンって抜けて帰っていくシーンがあって、そこを撮るのに道路の両サイドの地面に置いてある看板をすべて90年代のものに変えていました。エキストラも100人ぐらいを動員したから、久しぶりに都内で大がかりな撮影をしているなあという感覚になりました」。
東京の街中での撮影のほか、片桐の自宅のシーンは郊外の日本家屋で撮影。それでも「記者クラブや警察署などは連続ドラマとは思えないくらい、大がかりなセットを建てたから、けっこうな規模感でした」と強調する。「それに全8話の中盤から後半にかけては、前半とはエリアを変えてロケしているんですよ。昔風のビルの外観をねらって組事務所のシーンや機動隊が走っていくところを撮りましたが、いまと90年代では街の装飾なんかもちょっと違う。撮影するエリアを変えることで、その微妙なコントラストを出せたような気がします」。
「マイケルのリアリスティックな表現についていくスタッフは寝る暇もなかったと思う」
90年代を再現するために、コスチュームや小道具にもこだわった。「90年代は近いようで遠い。僕のスーツもちょっとダボっとした幅広のもので、ほとんど作ってもらいました。実際にそれを着てみると、気分はまさに“90年代”という感じでした」と述懐する。
「ただ、スタッフは大変だったと思います。衣装合わせでコスチュームを決めても、セットやそこに入ったキャラクターのイメージに合わない時は、オンセットで衣装を変えていましたから。僕たち俳優陣は、マイケルがこのセットのなかにあるものがすべて真実なんだって信じさせてくれたから居心地がよかったのですが、マイケルのリアリスティックな表現についていくスタッフは寝る暇もなかったと思います。全員が口をそろえて『こんなに大変な仕事は初めてだ』と言っていましたが、『でも、こんなに楽しくておもしろい、インタラクティブな現場を体験することができて本当にうれしかった』とマイケルのことを称えてもいました」。
「90年代は東京もまだゴチャゴチャした時代だよね」と、渡辺は続ける。「いまよりもっとカオスというか、平成に向かう端境期だから、昭和の匂いが残った昔の東京みたいなシーンもあれば、洗練された東京のシーンもある。そんな揺れ動いていた時代の東京を舞台に、J・T・ロジャースがそれぞれの登場人物が複雑なバックグラウンドを持ったすばらしい脚本を書いてくれた。新聞記者役、刑事役という役割だけではなく、それぞれに闇があったり、家族とのドラマがあったり、いろんな含みを持たせてくれた。(菊地)凛子が演じたジェイクの先輩の女性記者、詠美にしても、“この人はなにを抱えているんだ?”と視聴者は観ながら考えるだろうし、1本の映画では描ききれないストーリーが全8話のなかにある。もしかしたら、この8話でも描ききれていないストーリーもあるかもしれない」。
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■衣装協力
衣装:BRUNELLO CUCINELLI(ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社 03-5276-7080)
時計:Cartier(カルティエ カスタマー サービスセンター 0120-301-757)