宮野真守が語る、荒木哲郎監督への想い「監督にとっての安心材料でありたかった」
日本アニメ界を代表するトップクリエイターたちと豪華声優陣が集結し、第72回ベルリン国際映画祭にも正式出品され大きな話題を集めたオリジナルアニメ『バブル』(Netflix版配信中、劇場公開中)。このたびMOVIE WALKER PRESSでは、本作でメガホンをとる荒木哲郎監督率いる“荒木組”の常連声優たちのインタビュー連載を実施!第2弾を飾るのは宮野真守だ。
本作の舞台は世界に降り注いだ“泡(バブル)”によって重力が壊れ、ライフラインが断たれた東京。家族を失った若者たちはそれぞれチームを組み、ビルからビルへと駆け回るパルクールで競い合いながら生活物資を獲得していた。ある日、危険なプレイスタイルで注目を集めるヒビキは、無軌道なプレイで海へと落下。そこに突如現れた不思議な力を持つ少女ウタに命を救われる。ヒビキや彼のチームメンバーと共に暮らし、徐々に心を通わせていくウタ。しかしそんな矢先、ふたたび降泡現象が始まり東京は沈没の危機にさらされることに。
荒木監督の初監督作品となったテレビアニメ「DEATH NOTE」で主人公の夜神月役を務め、その後も「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」や「甲鉄城のカバネリ」など、荒木監督の作品に深い縁のある宮野。本作で演じているのは、主人公のヒビキが所属するパルクールのチーム“ブルーブレイズ”を支えるシン。劇中における数少ない年長者の一人で、ヒビキら少年たちにとっては頼れるアニキ的存在というキャラクターだ。
「荒木監督、そして小畑健先生の作品は僕の声優人生のなかでも非常に大きい存在です。またこの座組みで、さらに虚淵さんが加わっている企画に参加できるというのは非常にワクワクしました」と、本作のオファーが来た際の喜びと、制作スタッフ陣の豪華さに衝撃を受けたことを語る宮野。「荒木監督と初めてタッグを組んだ当時、僕自身はまだ経験不足でした。けれどスタッフとキャストがすごく親密になって作っていく空気感を味わうことができて、とても特別なひと時だったことをよく覚えています」と振り返り、それ以来荒木監督に厚い信頼を寄せてきたことを明かす。
「荒木監督は一見すると寡黙な方と思ってしまうのですが、実はとてもお茶目なんです。アニメーションやエンタメ、ファンタジーを作っていくうえでの少年性などを持ち合わせていて、それを演出として反映させる繊細さを持っています」と、長年にわたって絆を深めてきた宮野だからこそ知る荒木監督の素顔を語る。そして「キャラクターや作品にとことん寄り添い、愛しているのが伝わってくるんです。キャラクターの一番の味方になってくれて、演じる身としてはとてもうれしくなります」と、荒木作品と荒木監督自身の魅力を愛情たっぷりに語った。
重力が壊れ海に沈んだ東京を舞台に、少年たちの青春をアクションとファンタジーを共存させて描く本作。「『人魚姫』がモチーフとなっている、とてもピュアな物語。ヒビキとウタの美しさが際立っていて、思わずドキッとしてまう。息を呑む瞬間がたくさんあるなかで、目まぐるしく動くアクションが盛り込まれています」と熱弁をふるう宮野は、「荒木監督のまた新たな方向性を見たというか、リアルとファンタジーが本当にうまいこと融合している作品だと感じました」と、荒木監督のアニメーション表現の進化形にすっかり魅了されたようだ。
まさに荒木監督の集大成にして、新たなチャレンジの場となった作品に参加できたことについて、「信頼していただいていることがすごくありがたいです。なにかにチャレンジする時、いろいろと心配なこととか、不安なことがあると思うのですが、それを取り除くための安心材料としての存在になりたいと思いました」と語る。その言葉通り、劇中で宮野が演じるシンはヒビキをはじめとした少年たちに安心感を与える役割として物語を支えている。荒木監督と築き上げた信頼関係を作品世界に還元する宮野が、どんな好演を見せているのか。是非とも注目してほしい。
文/久保田 和馬