“観ることができない”と話題を集めた、謎の映画『太陽-TAIYO-』とは?

コラム

“観ることができない”と話題を集めた、謎の映画『太陽-TAIYO-』とは?

4月下旬に特設サイトで公開されたものの「アクセスしても観ることができない」とSNSを中心に話題を集めた一本の動画がある。それが、招待された人だけが観ることができる“完全招待制”のショートムービー『太陽-TAIYO-』だ。現在は公式YouTubeチャンネルにて招待がなくても視聴可能となっている本作が、映画ファンこそ必見といえるポイントを紹介しよう。

暗闇のなかを猛スピードで突き進む一台の車に乗り込む5人の男女。“時間”に追われているという彼らは、互いに素性を知らず、“生き残った”という唯一の共通点を持ち合わせている。そんな彼らを次から次へと襲う不可解な出来事…。本作はディストピア感あふれる物語をスピード感たっぷりに描き出した、10分間のショートムービーだ。

出演者はわずか5人しかいないが、豪華な顔ぶれが集結。車を運転するスタントマンの男・浅野役を高良健吾が演じ、助手席にいる佳代子役には水川あさみ。そして後部座席にいるやすこ役をファッションモデルとしても活躍するモトーラ世理奈、リュウジ役を『ムーンライト・シャドウ』(21)の佐藤緋美、さちお役を「もしも、イケメンだけの高校があったら」など話題作への出演が相次ぐ藤原大祐が演じている。

メガホンをとったのは映像美に定評のある柿本ケンサク監督
メガホンをとったのは映像美に定評のある柿本ケンサク監督

メガホンをとったのは、これまで数多くのコマーシャルやミュージックビデオを手掛け、昨年には林遣都小松菜奈のダブル主演で人気小説を映画化した『恋する寄生虫』(21)が高い評価を集めた柿本ケンサク監督。Lumixで撮影された高精細な映像は、序盤の暗闇のシーンからクライマックスの朝陽がのぼる開放感あふれるシーンまで、鮮明かつ臨場感たっぷり。映像美に定評のある柿本監督らしさがあふれた仕上がりとなっている。

また走る車に上空からアプローチし、フロントガラスの内と外を出たり入ったりしながら登場人物たちを映す冒頭の長回しショットは、アルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』(06)の伝説の長回しシーンを彷彿とさせる。“時間”に追いかけられる緊迫感も、M.ナイト・シャマラン監督の近作『オールド』(21)を連想させ、まさに映画ファンに刺さるポイントが至るところに散りばめられている点も見逃せない。


『太陽-TAIYO-』はNON公式YouTubeチャンネルにて公開中
『太陽-TAIYO-』はNON公式YouTubeチャンネルにて公開中

既存の枠にない試みにチャレンジするために今年5月に発足したばかりのプロデュースカンパニー、株式会社NONの第1弾プロデュース作品となった本作。長編映画のティザー映像と言われても疑う余地がないほどのクオリティと、奥行きを想像したくなるミステリアスな空気感。公開直後にSNS上では招待希望の投稿が殺到し、完全招待制ながら2週間で5000人以上が鑑賞にありつけたほどの反響を巻き起こしたという。

まずは百聞は一見にしかず。招待なしで観られるようになっているこの機会に、映像表現と世界観を目撃してほしい。また、株式会社NONは今後もショートムービーを起点に様々なコンテンツを準備中とのことで、その動向にも注目したい。

文/久保田 和馬

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