『フル・モンティ』の監督が明かす、11年ぶりの最新作に込めた“歌”と“音楽”へのこだわりとは
映画ファンから絶大に愛される傑作『フル・モンティ』(97)を手掛けたピーター・カッタネオ監督が、11年ぶりにメガホンをとった『シング・ア・ソング!〜笑顔を咲かす歌声〜』(公開中)。このたび本作から、カッタネオ監督らが劇中音楽へのこだわりを語る特別映像が解禁された。
本作は軍人の妻たちが合唱団を結成する、実話をもとにした物語。大切な人の無事を願いながら、英軍基地に暮らす軍人の妻たち。謙虚に静かに、普段と変わらぬ生活を送ることを求められる彼女たちは、共に苦難を乗り越えるための活動として“合唱”を始めることに。バラバラだったメンバーたちの心と歌声が一つになってきたある日、毎年大規模に行われる戦没者追悼イベントへの招待状と、恐れていた最悪の知らせが届く。
本作の重要な要素となるのが、劇中で合唱団が歌う楽曲の数々。使用されるのはシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」などの有名なポップソング。カッタネオ監督は「音楽と歌を選ぶのが本作の醍醐味だった」と、音楽配信サイトで数千万の曲から選出したことを明かす。そして10曲ほどの候補が選ばれたものの、最終的に5〜6曲をピックアップするうえでもさらなる苦労があったことを、音楽監督のリズ・ギャラガーと共に振り返っていく。
一方で作曲を務めたローン・バルフは、候補曲を受け取ると女性の声に合うようにキーを調整したり、合唱用にアレンジするなど本作オリジナルの楽曲に仕上げたという。さらに劇中には同じ曲が状況や設定を変えて何度もリフレイン。それについてカッタネオ監督は「同じ曲を繰り返し流せば、劇中の登場人物と同じ感覚を味わえると考えました。繰り返し使うことで、劇中の展開とリンクしていきます」と、観客の心を動かすガイドとしての役割も担っていることを告白。
広く知られた名曲たちに登場人物たちの心情やストーリーに寄り添った新たな解釈を加えることで、さらなる魅力を上書きしていく製作陣たちのマジックが冴え渡った本作。是非とも劇中の楽曲に注目しながら、珠玉の物語を堪能してほしい。
文/久保田 和馬