集英社初の作品名部署「ドラゴンボール室」、室長が語る鳥山明の“二面性”と「DB」の世界戦略 - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
集英社初の作品名部署「ドラゴンボール室」、室長が語る鳥山明の“二面性”と「DB」の世界戦略

インタビュー

集英社初の作品名部署「ドラゴンボール室」、室長が語る鳥山明の“二面性”と「DB」の世界戦略

「ドラゴンボール室の役割は、鳥山先生と共に作品を継続していくこと」

【写真を見る】まったく新しいビジュアルで贈る、“眼福”タップリの『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』
【写真を見る】まったく新しいビジュアルで贈る、“眼福”タップリの『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』[c]バード・スタジオ/集英社 [c]「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

ドラゴンボール室長として伊能が心がけているのは、作品を継続し続けていくこと。「作品名を冠している部署なので、この先どう展開していくのか、積極的に声をあげていきたいと考えています。大事にしているのは、原作者である鳥山先生が作品に関わること。別に先生に鞭打って動いてもらうわけではありませんが、本人の希望を探り続け、関係各所に言語化して伝えることが、私自身、そして部署としての役割だと考えています。先生には3年後、4年後のイメージを共有しながら進めるようにしています」と微笑む。映画に関しては最初から「何年かごとにやりましょう」と鳥山と話していたという。毎年制作する映画ではないからこそ、定期的にやっていこうというイメージを共有することが、継続という意味においてとても重要であると力説した。

「ドラゴンボール」を続けていくうえで、ジャンプ作品の王道である熱い展開を描く秘訣、いわゆる「友情、努力、勝利」の三原則はいまも絶対なのだろうか。「私も含めて、社内にいる人間もそこまで意識していない気がします」としながらも、「ただ、『週刊少年ジャンプ』がいまでもこれだけ作品を出し続けられる理由は、作家と編集の関係性にあると思っています。社内ではいまも、常にあちこちで作家と編集が電話で話す声がしています。ずっと変わらずそのスタイルを続けていることこそが、作品を生み出すことにつながっている気がします。もちろん作品がすべてヒットするわけではありませんし、ヒットしなかった作品がすべておもしろくなかったというわけでもない。散々話し合ったけれど、ユーザーに受け入れられないことだってある。だからといって、作家とのやり取りが無駄だったかと、皆後ろ向きになりません。ユーザーが受け入れることだけを考えて作ったら、作家が本当にやりたいこと、好きなことが出てきませんから。傍から見れば無駄が多いと感じると思いますが、その無駄の多さこそがよい作品を生み出すうえで、大事だと考えています」。


伊能にとってのスーパーヒーローとは?
伊能にとってのスーパーヒーローとは?

今後「ドラゴンボール室」として目指すことについては、「地道にやるしかないというのが一番にあります。映画に関していうと、おもしろければ当たるわけでもない。おもしろいのは大前提なんです。好きな人だけに向けて作っていくのも一つの方法だけど、もっと一般に広げていくことを考えたら、新しい要素を投入することも必要です。そのバランスをとりながら、とにかく作り続けること。それが大切だと考えています。これだけ長く愛されている作品なので、世代交代は特に意識するところです。第一世代が親となり、その子どもが観るようになり、と幅が広がってきています。世代間を意識しながら、大人も子どもも楽しめるもの探り続けていきたいですね」。

最後に、本作がタイトルに掲げる“ヒーロー”とはなにかを訊いてみると、「ちょっとこそばゆい気もしますが…」と照れ笑いしつつ答えてくれた。「誰もがヒーローであると、映画では伝わるといいなという思いがあります。あまり深く考えずに、映画を観たあとに“ちょっと頑張ろう”という気持ちになり胸を張って歩いてほしい、そんな感じです。僕自身はヒーローを倒したいタイプの人間なんですがね(笑)」。

『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は公開中
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は公開中[c]バード・スタジオ/集英社 [c]「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

取材・文/タナカシノブ

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