集英社初の作品名部署「ドラゴンボール室」、室長が語る鳥山明の“二面性”と「DB」の世界戦略
「鳥山先生には、物腰の柔らかさと、非常に強いこだわりという二面性があります」
「ドラゴンボール」の世界的な人気を鳥山にもっと肌で感じてほしい、数字として見せたいという思いも、映画を作る大きな原動力だと語る伊能。「世界各地にいるファンを集結させるというのでしょうか。映画を作り“こんなに盛り上がっています”と、視覚化して鳥山先生にお知らせしたいんですよね」と笑顔を見せる。
編集者としても鳥山と仕事を続けてきた伊能に、鳥山の作家性や人柄の魅力について尋ねた。「二面性があるということ。これは作品にも人柄にも通じるところで、先生にお会いすると皆さん『物腰も柔らかくて、明るくていい人』とおっしゃいます。なんでも受け入れて下さる雰囲気や、懐の深さをお持ちになりながらも、こと作品作りにおいてはとにかくこだわりが強い。そんな二面性を持っている気がします。そこが作品の強度を支えているように思います」。
「先生のすごいところは、やはり唯一無二の画。これは本当にすごいし、皆さんもそう感じていると思います。そして、ストーリーテリングの力もずば抜けています。今回の映画でも、脚本を書いていただきましたが、まあ、普通では書けないようなものが出てくるんですよね。原作者だからずるいと言えばずるいのですが(笑)。物語の跳躍ぶりは誰にも真似できないところです。あとはやはりキャラクター作りですよね。『ドラゴンボール』は人型ではない、異質なデザインの宇宙人も登場する。とにかく想像力がすごすぎて、尋常でないと感じずにはいられません」と、唯一無二の魅力を熱く語る。
「本作をご覧になると分かると思いますが、今回は従来と違うビジュアルにしています。鳥山先生は、作品を作るごとにビジュアル面を更新していくことを求めてらっしゃるのですが、『ドラゴンボール』ってこうだよね、というのが皆さんのなかにあるから、難しい部分でもあるんです。だけど、鳥山先生は毎回、“僕のイラストを変えたから、アニメーションでも変えてね”とプレッシャーをかけてきます(笑)。従来のイメージとの塩梅はかなり難しいのですが、ビジュアル面の更新は本作のテーマだったので、そこは注目してほしいところです。今回のテーマを分かりやすく言葉にするならば“眼福”。シンプルに、観てすごい、かっこいいと感じてもらえることを目指して作りました」と胸を張った。