是枝裕和監督が明かす、名優ソン・ガンホとの仕事「最後の最後まで一緒に走ってくれました」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
是枝裕和監督が明かす、名優ソン・ガンホとの仕事「最後の最後まで一緒に走ってくれました」

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是枝裕和監督が明かす、名優ソン・ガンホとの仕事「最後の最後まで一緒に走ってくれました」

第75回カンヌ国際映画祭にて主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる「最優秀男優賞」を受賞した映画『ベイビー・ブローカー』の凱旋記者会見が13日、スペースFS汐留にて開催され、是枝裕和監督が登壇した。

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本作は、赤ちゃんポストをきっかけに出会った赤ん坊の母親、ベイビー・ブローカーの男たち、そして彼らを現行犯逮しようと追いかける刑事らが絡み合いながら繰り広げる一風変わった旅路を描くヒューマンドラマ。カンヌ国際映画祭では最優秀男優賞に加え、「人間の内面を豊かに描いた作品」に与える「エキュメニカル審査員賞」も受賞し、あわせて2冠の快挙を成し遂げた。

カンヌ後に韓国でプロモーションと韓国公開初日を迎えた後、日本に帰国した是枝監督。空港から直行して行われた本会見で、受賞の瞬間を振り返り、「ソン・ガンホさんの名前がよばれたときに“なるほど”と感じた」とコメント。作品にとって最高のゴールを迎えたことにその瞬間気づいたと説明した。受賞日の夜には、韓国チームでお祝い会を開いたといい、「みんなが本当に幸せな夜でした。役者が褒められるのは一番うれしいです」と満面の笑みを浮かべた。『誰も知らない』(04)で同映画祭の最優秀主演男優賞を柳楽優弥が受賞した際には、柳楽に代わって是枝監督が受賞式に代理出席した。「役者とあの場所で一緒に(受賞を)たたえあうのは初めてだったので、特別な夜でした」としみじみと語った。

カンヌから韓国に飛び、日本に帰国してすぐに会見にのぞんだ
カンヌから韓国に飛び、日本に帰国してすぐに会見にのぞんだ

ソン・ガンホ、そして、ポン・ジュノをはじめとする韓国の監督に対しては「僕が監督した映画での受賞となり、なんだか申し訳ない」の苦笑い。どの監督作品で受賞してもおかしくないとソン・ガンホの実力をたたえながら、「韓国の監督やファンの方たちには、僕らのソン・ガンホという気持ちがあると思うので、申し訳ない気持ちが正直あります」と恐縮する場面もあった。

韓国での舞台挨拶の様子にも触れ「とにかく熱狂的。叫び声がずっと聞こえているような状況でした」と熱いファンの声援に驚いた様子。「僕の映画はあまり善悪がはっきりしなくて、ストーリーラインに起伏がない。なので、(韓国にて大ヒット中の)『犯罪都市2』とどちらを観ようかなと迷って『ベイビー・ブローカー』を観た方は“ん?”と思ったんじゃないかなというのはあります」と自身の映画と韓国映画の特徴を比較していた。


ガンホとの撮影についてはポン・ジュノ監督からもアドバイスを受けていた模様
ガンホとの撮影についてはポン・ジュノ監督からもアドバイスを受けていた模様

質疑応答では、韓国映画ではあったものの、自身のアプローチはいつもと変えずにスタイルを貫いたと説明。是枝式で制作できたことに感謝しながら「僕自身はとても楽でした」と満足の表情を浮かべた。ガンホについては「本当に楽しい人」と語り、「その場に彼がいるだけで、みんながニコニコしちゃいます」とムードメーカー的存在であることを明かす。

クランクイン前にポン・ジュノ監督からオフィスで、「(ソン・ガンホが)現場に入ったらすべて彼のペースで進む」と予告され「なにも心配ない!」と言われたそう。実際の撮影現場では「本当にその通り」だったと話し、誰よりも早く現場に現れ、観れるものがあるならと前日の撮影のテープをしっかりチェックし、必ず「すばらしかった」と褒めてくれると微笑む。「それを毎日やってくれるのでとても助かりました」と感謝し、さらにテイクごとに違う自分の演技を覚えており、「いまつないであるセリフの2つ前のセリフのほうがいいかも」などと、アドバイスもしてくれたという。最終的には監督に任せるとしながらも、仕上げを行うダビングルームまでやってきたことに触れ「最後の最後まで一緒に走ってくれました」とガンホのこだわりを明かしていた。

「ガンホの隣に立って!」とのリクエストを受けてのフォトセッション
「ガンホの隣に立って!」とのリクエストを受けてのフォトセッション

いつもよりも少し感情表現が豊かになっているという声もある本作については、「僕が意識したというよりも、役者の持ち味によりそうなったのかも」と語り、「韓国映画だから感情を強調しようと思ったつもりはなく、ちょっと言葉にしてみようかなくらいの思いはありました」と解説。いつもとちょっぴり違うアプローチの際には「灯りを消していました」と、撮影の際、恥ずかしさを隠すような場面があったと微笑んでいた。

取材・文/タナカシノブ


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