好きがつなげる絆にほっこり『メタモルフォーゼの縁側』、本格時代劇の逸品『峠 最後のサムライ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、1冊のBLに漫画をきっかけに女子高生と老婦人が58歳差の友情を育むドラマ、司馬遼太郎の名作を役所広司の主演で映画化した時代劇、ブラムハウス・プロダクションズが1984年の同名作品をリメイクしたスリラーの、家族や友人の絆に胸を打たれる3本。
年齢差による補完関係と思いやりあう関係性にほっこり…『メタモルフォーゼの縁側』(公開中)
全5巻からなる鶴谷香央理によるコミックの映画化。ドラマを多く手掛けて来て、映画『青くて痛くて脆い』(20)でも手腕を発揮した狩山俊輔が、丁寧に作り上げた心地よい良作。脚本は「にじいろカルテ」、「姉ちゃんの恋人」の岡田惠和。夫に先立たれ、一人で暮らしている75歳の雪(宮本信子)は、立ち寄った本屋さんで、表紙の美しさに惹かれて1冊のBL漫画を手に取る。本屋でバイトする女子高生、うらら(芦田愛菜)は、“お婆ちゃんがBL漫画!?”と驚くが、実は自分も大のBL漫画ファン。すっかり漫画に魅了された雪が、続きを買いに本屋を訪れ、うららと言葉を交わすようになっていく――。
原作より“お婆ちゃん感”は薄いが、人生の厚みを感じさせる包容力や温かさを醸す宮本、どことなく挙動不審で学校で浮くオタクっぽさを体現する芦田、両者さすが芸達者!58歳差の2人が“大好きなBL漫画”を間につながり、関係を深めていく姿が見ていて心地よいのは、主演2人の“上手さ”にも拠るが、同時にとても丁寧に作られている安心感――画づくりも、不自然でないエピソードの配置も――に大きく拠るだろう。年齢に関係のない色褪せぬ好奇心、好きなものを愛でる素直さ、年齢差による補完関係と互いを思いやりあう関係性に、思わずほっこり。雪に背中を押され、一歩踏みだすうららの姿に希望と勇気をもらえるハズだ。(映画ライター・折田千鶴子)
なんと言っても継之助を演じた、役所広司が見事…『峠 最後のサムライ』(公開中)
司馬遼太郎の時代小説「峠」を小泉堯史監督が映画化したもので、幕末の戊辰戦争で西軍(いわゆる官軍)50,000人に、たった690人で戦いを挑んだ越後長岡藩の家老、河合継之助の姿を描いている。なんと言っても継之助を演じた、役所広司が見事。原作者は継之助を、武士道倫理と江戸期の儒教が融合した武士の最終形と捉え、小泉監督もその意を汲んで脚本を書き上げた。映画の継之助は最初、西軍にも東軍(徳川幕府軍)にも組みしない武装中立を目指すが、その道が閉ざされると、長年徳川家に受けた恩に報いるため、義によって西軍と敵対する。彼の家には「常在戦場」という額が飾られているが、常に死を意識して、侍としての美しい生き方を貫く継之助は、実に立派。普通ならここまで立派な武士をリアルに演じることはかなり難しいと思うが、役所はそれをやり遂げた。こんなリーダーがいたらいいのにと素直に思わせてくれる、役所の代表作にして本格時代劇の逸品である。(映画ライター・金澤誠)
新星子役の、上目遣いによる不穏感満点の演技…『炎の少女 チャーリー』(公開中)
スティーヴン・キングの人気小説に基づく同名スリラーを、恐怖色を強めてリメイク。極秘投薬実験を受けた過去を持つ両親の間に生まれた少女チャーリーは自然発火能力を持っており、そのために研究機関に追われている。両親は感情の制御を教えるが、カッとなると火を放つ彼女の力は、しばし騒動を引き起こす。物語は、そんな彼らの隠遁と逃避、刺客との攻防を軸にしてスリリングに展開。壮絶な展開を経て、怪物的な能力を持ってしまった少女の悲哀がジワリとにじむつくりとなった。炎のスペクタクルは前作以上に圧巻だが、なによりも11歳の主人公に扮した新星ライアン・キーラ・アームストロングの、上目遣いの不穏感満点の演技が存在感ともども怖い!(映画ライター・有馬楽)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼