挑戦し続ける俳優カン・ドンウォン、『ベイビー・ブローカー』は「一番自然な演技を披露した作品かも」IUとの“観覧車”名シーンの舞台裏も明かす
「いままでで一番力を抜いたけど、一番真心を尽くして演技しました」
『ベイビー・ブローカー』のドンスは児童養護施設で育った人物で、自分と似た境遇にいる子どもたちを養父母とつなぐためにブローカーとして活動する。同作でカン・ドンウォンは、共演するキャストたちを輝かせる役割も果たした。主役級のキャストが集った本作、なかには「カン・ドンウォンの演技をもっと観たい!」という人もいるかも知れないが、彼は自分が主役になることにこだわらない。それがカン・ドンウォンの役者としての心構えである。
「いままでで一番力を抜いて、自然な演技を披露した作品かも知れません。個人的には、こんなキャラクターが結構好きなんです。かっこよく見えたいとか、特別な人に見えたいとか、そういうのはまったくないので、プレッシャーとかストレスもないですしね。ただ、“完全にドンスになりきる”ということにはこだわっていました。児童養護施設出身の方々に会っていろんなお話を伺いながら、ドンスの心の痛みと悲しみを理解できるように努力しました。その方々にも映画を観ていただいたのですが、ソヨン(イ・ジウン)がサンヒョンとドンス、ヘジン(イム・スンス)に『生まれてくれてありがとう』と伝えるシーンが一番良かったと言われました。『皆で手をつないで泣いてしまいました。本当にありがとうございます』と。『生まれてくれてありがとう』は、おそらく、誰よりもドンスが一番聞きたかった言葉じゃないかと思います」
ほかにも是枝監督を含め、たくさんの観客があげた名場面の一つがドンスとソヨンの“観覧車シーン”である。カン・ドンウォンは「観覧車の中がかなり狭かったので、ホン・ギョンピョ撮影監督と僕とイ・ジウンさんの3人しか乗れなかったんです。高くなればなるほどトランシーバーの音も聞き取りにくくなってしまって、観覧車の下で待っていた是枝監督が『どんな風に撮影しているのだろう』と、居ても立っても居られない状態だったという話を後から聞きました(笑)。
監督のディレクションがなかったので少し不安はありましたが、ドンスが自ら自分の過去について語る唯一なシーンなので、真心を尽くして演技しなければならないと思いました。特にドンスがソヨンの目を手で隠すシーンを、意味深い感じに完成させたかったんです。ソヨンの涙が流れる直前に淡々と目元を隠したかったですが、タイミングがぴったり合って、まるで魔法のようなシーンが生まれました。是枝監督も大満足してくださって、とてもうれしかったです」と、ビハインドストーリーを明かした。
カン・ドンウォンが撮影現場で子役たちの保護者を自任したのも、もう一つのビハインドストーリー。イ・ジウンが「思わず私とも遊んでくださいとお願いするところでした」と語るほど、子役たちとまるで友達のように仲良くしていたという。
「現場のスタッフってみんなすごく忙しいんじゃないですか。子役の面倒をみたり一緒に遊んだりするのは、当然自分がやるべきことだと思いました。劇中ヘジンとは途中からずっと一緒にいるので、『仲良くしなきゃ!』と思ったのもありますけどね(笑)。子役たちはわいわい盛り上がっていればいるほど、リアルで自然な演技ができますしね。みんな本当に可愛くていい子たちで、とても癒されました」