是枝裕和監督×イ・ジウン×イ・ジュヨンの鼎談が実現!「『ベイビー・ブローカー』を通して出逢った方たちが大好き」
『誰も知らない』(04)、『万引き家族』(18)など、社会の片隅に強く根を張って生きる人々を描き続けてきた、是枝裕和監督。そんな監督が、韓国の名優たちに自らラブコールを送り作り上げた『ベイビー・ブローカー』(公開中)は、第75回カンヌ国際映画祭で、主演のソン・ガンホが韓国人俳優として初めて最優秀男優賞を受賞したことに加え、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞に輝くなど、世界から称賛を浴びた。赤ちゃんポストから子どもを盗みだして売るブローカーと、赤ちゃんをポストへ預けた母親がひょんなことからめぐり逢い、養父母を探す旅に出る本作は、この世に生まれたすべての命を真っ直ぐに祝福する。
今回、母親役のソヨンを演じた歌手のIUことイ・ジウンと、ソヨンを追跡しつつも彼女の境遇に心が揺れる刑事を演じたイ・ジュヨン、そして彼女たちの魅力を知り尽くす是枝監督による鼎談が実現。撮影秘話や思い出深いシーンについて語る3人の言葉からは、『ベイビー・ブローカー』という作品とお互いへのリスペクトが伝わってきた。
「イ・ジウンさんたちの表情で、『いいものが撮れたな』というのは伝わってきました」(是枝監督)
――「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」で注目していたイ・ジウンさん、「梨泰院クラス」で惹かれたというイ・ジュヨンさんと本作を撮られた是枝監督ですが、それぞれお2人のシーンで一番心に残っているのはどこですか?
是枝「(だいぶ悩んだ末)イ・ジウンさんは、カン・ドンウォンさんと観覧車に乗るシーン!あれはその場に立ち会えてないからね。ゴンドラの中は狭くて乗り込めなかったからカメラマンしか乗っていなくて、地上で待っていたんです。一度地上でリハーサルはやったんだけど、観覧車が上に行っちゃうと電波が届かなくて音声も取れなくなっちゃうから、どんなカットが撮れているか終わってみないとわからなくて。ただ、降りてきた時の(イ・ジウンさんたちの)表情とかで、『あっ、いいものが撮れたな』というのは伝わってきましたね」
――詳しくは劇場でご覧になって頂きたいですが、あのシーンでのイ・ジウンさんの演技、タイミングが絶妙でしたよね。
是枝「(しみじみと)感動するよね」
イ・ジウン「私じゃなくて、カン・ドンウォンさんの演技のタイミングが絶妙だったんですよ(笑)」
是枝「イ・ジュヨンさんだと…(まただいぶ悩んで)もともと好きな俳優だし、たくさんあるんだけど、『梨泰院クラス』の時もちょっとコミカルなところが好きだったんだよね。だから今回も、張り込みで辛ラーメン食べているところとか、ああいう軽いシーンかな。あとはイ・ジウンさんは、ペ・ドゥナさんとの夜の屋上のシーンとか。車の中で真っ直ぐペ・ドゥナさんに食ってかかるシーンもよかったね」
――是枝監督いわく、「ペ・ドゥナさんはなにかをしながらセリフを言うのが上手いから、今回もたくさん食べながら話してもらった」とのことですが、イ・ジュヨンさんもペ・ドゥナさんと一緒に車の中で食べるシーンが多かったですね。
是枝「そうそう。大変だったと思うよ(苦笑)」
イ・ジュヨン「撮影前、監督から『このシーンではあまり音をはっきり撮らないから、食べている音がよく聞こえるように、大きな口を開けて豪快に食べてほしい』というリクエストがあったんです。本当にたくさん食べましたね!」