DCドラマ「ピースメイカー」は居場所をなくした男への救済措置的作品?「スーパーマン」でも「バットマン」でもなく「スースク」を選んだジェームズ・ガンの”愛情”
イヤな奴なのに気づけば好きになっているピースメイカーの不思議な魅力
「ピースメイカー」は、『SS』の終盤で戦線から離脱したピースメイカーが、治療を受けて、スーサイド・スクワッドを統括する組織の司令官アマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイヴィス)から新たなミッションを下されるところから始まる。
しかしその作戦の目的はなかなか明かされず、赴任先は平凡な田舎町。宿舎はモーテルだし、バックアップ任務に就くのも『SS』でウォラーに反抗的な態度を取っていたハーコート(ジェニファー・ホランド)とエコノモス(スティーヴ・エイジー)という左遷組。おまけにこの手の任務は初めての女性アデバヨ(ダニエル・ブルックス)までいるショボい体制だ。
だが、そんな地味なシチュエーションの影に隠された地球存亡の危機が徐々に明らかになっていくにつれ、ピースメイカーをクソ野郎にしたきっかけとなった少年時代のトラウマも語られていく。キーパーソンは、ホワイト・ドラゴンの異名を持つ白人至上主義者の父オーギー(演じるのは、『ターミネーター2』のT-1000役で有名なロバート・パトリック!)。そして観客は気づくはずだ。知らないうちにピースメイカーに好感を抱いていることに。彼がアデバヨをはじめとするチームのメンバーたちと奇妙な友情で結ばれていく姿は、胸熱モノだ。
80'sメタルをふんだんに使用したジェームズ・ガンの音楽へのこだわり
強張った筋肉の下に隠された哀れさ、脆弱さをふとしたシーンで垣間見せるジョン・シナは、本作で俳優としてネクストステージに到達したのではないだろうか。
そんなシナ=ピースメイカーの活躍を、ガンは強烈なバイオレンス描写と共に描いていく。『SS』以上に悪趣味に感じられるのは、本作の音楽に1980年代のグラムメタルやヘアメタルが大フィーチャーされているからかもしれない。モトリー・クルーはともかく、シンデレラやY&T、クワイアボーイズまで使っていることにガンのジャンル愛を感じるし、ハノイ・ロックスに至ってはチームを結びつける役割まで果たすのだ。
なおガンは、今後もDCEUで同一世界の作品を作り続ける予定があるという。詳細は明かされていないものの、本作で「ピースメイカーのズッ友」を自称して傍迷惑な活躍をしていたクライム・ファイター、ビジランテ(フレディー・ストローマ)の再登場は確実のようだ。
文/長谷川町蔵