冠抜きで勝負した心意気がうれしい『バズ・ライトイヤー』、逃げ場のない恐怖に震える『X エックス』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、あの世界中で大人気のおもちゃのルーツに迫るアニメ、MCU最新作で雷神ソーが元カノと共闘するアクション、史上最高齢殺人鬼(!?)が人々を恐怖に陥れるA24作スリラーの、スリルもアクションも抜群の3本。
「トイ・ストーリー」という冠抜きで勝負した心意気がうれしい『バズ・ライトイヤー』(公開中)
アンディを夢中にさせたアクションフィギュア、バズ・ライトイヤーの元映画という体の本作は、いわば「トイ・ストーリー」の劇中劇。7歳だったアンディを夢中にさせた宇宙レンジャーという設定から、勧善懲悪のヒーロー活劇だと思っていたら、よい意味で裏切られた。
宇宙船のハイパースペース装置の破損によって、1200人のクルーとともに未知の惑星に足止めされたバズ(声:鈴木亮平)。故郷の星に戻るため彼はハイパースペースのテストパイロットを買って出る。光速を超えるテスト飛行が時間の流れる速度を変え、バズとクルーの間に物理的、心理的なズレを生んでいく展開は、クリストファー・ノーランの『インターステラー』(14)でも描かれたウラシマ効果。ライトイヤー(光速)という名前から逆算したプロットだろうが、ディズニー&ピクサーらしい凝り方だ。
リーダーの資質や使命感を問うドラマに加え、宿敵ザークの設定も“大人向け”すぎじゃないかと心配なほどのヒネリぶり。キメのポーズやフレーズなど“元ネタ探し”もお楽しみだが、なにより「トイ・ストーリー」という冠抜きで勝負した心意気が嬉しいアクション・エンターテインメントである。(映画ライター・神武団四郎)
畳みかけるように衝撃的な見せ場が連なる…『X エックス』(公開中)
『ミッドサマー』(19)のA24が、またもトンでもないスリラーを放つ!映画の撮影のために田舎の農場を訪れた若い男女6人に迫る殺人鬼。その正体は、農場主である後期高齢者の夫妻だった!体の自由が利かない老夫婦が残忍な殺人を犯す、そんな意外性に富んだ展開。彼らの殺人の動機を知っていくことでドラマは深みを増していく。
ネタバレになるので詳細は省くが、そこには老いと若さのせめぎ合いが息づき、サイコな恐怖を感じさせるに違いない。『サクラメント 死の楽園』(15)で知られるホラーの俊英タイ・ウェストは、そんな心理劇に遠慮ないスプラッター描写を加え、畳みかけるように衝撃的な見せ場を連ねる。逃げ場のない恐怖を体感せよ!(映画ライター・有馬楽)
さらに磨きがかかる、神々のバトルアドベンチャー…『ソー:ラブ&サンダー』(公開中)
マーベル・シネマティック・ユニバース最新作にして、雷神ソー(クリス・ヘムズワース)を主人公としたシリーズ第4作目。過酷な戦いを経て、多くの仲間を失ったソーは、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーと旅をするなかで、全ての神々を殺そうとする“神殺し”ゴア(クリスチャン・ベール)による地球襲撃の情報を目にする。地球に降りたち、ニューアスガルドを襲うゴアの軍勢と戦うソーの前に、新たな戦士が現れる。その戦士とは、壊れたはずの聖なるハンマー、ムジョルニアを手にした、ソーのかつての恋人であるジェーン(ナタリー・ポートマン)だった…。
シリーズを重ねるなかで、愛らしく人間っぽさが増した雷神ソーは、大いなる戦いを経て燃え尽き症候群的な状態に。そこで起こった宇宙規模の神々の危機に、神の力を得た元カノとともに立ち向かう…という状況をコメディ的なセンスと大規模アクションを両立させる手腕を持つ、前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17)を手掛けた監督のタイカ・ワイティティが、その絶妙な演出テクニックで見事に見せきってくれる。ソーの持つキャラクター性と明るい作風は、前作以上の輝きをまとい、見終わったあとに独特の爽快感を味わうことができる1本となっている。(ライター・石井誠)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼