「『ゆるキャン△』の世界はずっと続く」京極義昭監督が語る、映画化の覚悟と溢れる原作愛
「原作が大好きだからこそ、世界観に入っていただく可能性を狭めたくなかった」
”メインキャラクターたち5人のその後”を描いた本作は、原作にないオリジナルストーリーゆえ、公開前にはファンのなかで期待と不安の声が入り混じっていた。京極監督は公開後の反応を見て、「オリジナルストーリーで描くと決めたときから、賛否両論は覚悟していました。でも、思ったよりも受け入れられているという印象があります」と安堵した様子。テレビシリーズのファンを喜ばせることも大事だが、それだけではコンテンツの可能性を狭めてしまうのではないかと懸念したそうで、「映画にすることでたくさんの方に観てもらう可能性があるなら、それを広げていきたいという想いがありました。『ゆるキャン△』にはまだまだ新しい魅力もあるよ、こんな楽しみ方もあるよと提案したい。原作が大好きだからこそ、世界観に入っていただく可能性を狭めたくなかったんです」と映画化するうえでの“覚悟”を振り返った。
テレビアニメ、スピンオフ、映画化を経て、改めて作品の魅力を強く感じたという京極監督。「作り手として、作品の核となるものを考えていきましたが、『ゆるキャン△』のおもしろさって、うまく言語化できないんです。でも、原作を読み込んでいくうちに、キャラクター、キャンプ、美しい風景、グルメ、バイク…などなど、いろいろな要素が複合的に絡みあって構成されていることに気づき、結果的に“全部魅力だよね”というところに落ち着きました。5年以上作り続けても1つに絞りきれない、それこそが『ゆるキャン△』の魅力だと思っています。キャンプの楽しみ方が様々であるのと同じで、絞りきれない魅力のなかでその人なりの楽しみ方をすればいいということも、作品から教えてもらった気がします」。
そして、原作者の作風こそが”楽しみ方の自由さ”を作り出しているのだと、あふれんばかりの原作愛と共に語る。「現状に留まらないで常に変化していくあfろ先生の作風は、いまの時代にマッチしていてとても多様です。自分たちが考える『ゆるキャン△』の魅力を、アニメですべて出しきったと思っても、新たな魅力がまだまだ発見できる原作なんです。この多様なあり方が、楽しみ方の自由さにつながっているのだと思います。だから、今回の映画のように主人公たちを大人にした物語でも受け入れてもらえたのでしょう。僕たちがアニメを作り終えたあとも『ゆるキャン△』の世界はずっと続いていって、また新たな魅力に気づかされるのだと思います」。
取材・文/タナカシノブ