「『ゆるキャン△』の世界はずっと続く」京極義昭監督が語る、映画化の覚悟と溢れる原作愛
「なでしこたちがどう動くだろうと想像することで、自然と物語になっていきます」
原作では、一つ一つのキャンプを丁寧に描くことで、キャンプを経て主人公たちがなにかを感じとり、成長しているさまが表現されていると説明する。「あfろ先生の原作は非常に緻密。ストーリーは毎話きちんと完結していますが、よく読むと次のキャンプでは前回の経験とのつながりが感じられます。映画化の話が出たのが、『SEASON2』の終わり方も決まっていなかったタイミングだったので、必然的にオリジナルストーリーにするしかないと考えました。高校生のままでも作ろうと思えば作れたかもしれません。でも、ストーリーのなかで、『映画で描かれたキャンプで得た経験はなんだったのか』と、原作と齟齬が出てしまう。それだけは避けたかったので、思い切って大人になったなでしこたちを描こうという話になりました」と、”その後の話”を選択した理由を語った。「ちょうど、なでしこの妄想シーンで大人になった5人の話が、第1作目の12話に出てきたこともあり、おもしろいものが描けそうだと思いました」。
大人になったなでしこたちを演じる声優陣には、明確な指示やディレクションを出さず「思うようにやってください!」と伝えたそう。「『ゆるキャン△』のキャストは、実力のある方ばかり。ずっと一緒に作品を作ってきたし、絶大な信頼を置いています。だからこそ、キャストがイメージする大人のなでしこたちを演じてもらうのが一番だと思いました」とアフレコを振り返る。「僕自身もそうですが、大人になったからといって大きな変化があるわけではありません。もちろん、仕事をするうえで、言葉遣いやマナーなどには大人としての変化はあると思います。だからといって、大人としてどう描くか、どう演じるかを強く意識しなくても、脚本が出来上がり、画が出来上がりと作業が進む過程で、自然と成長を感じる演技になりました。いつも通り演じていただくなかですばらしい演技になったことは本当によかったと思うし、改めて感謝しています」。
メインキャラクター5人が乗る車にいたるまで、細部の描写にキャラクター像が浮かんでくるのが魅力な本作。制作するうえで、テレビシリーズでの経験が大いに役立ったと説明する。「『ゆるキャン△』の制作では、自分たちがキャラクターを動かすというよりも、キャラクターがどう動くだろうと想像することで、自然と物語になっていきます。なでしこやリンならこんなふうに動く、こういう選択をするとイメージするんです。テレビシリーズでも、オリジナルシーンを作る際にはなでしこたちが動き出すのを待っていました。自分たちが作っていて、キャラクターが動くのを待つというのも、ちょっと変な表現かもしれないけれど(笑)。やっぱり、キャラクターたちの自然な行動は、キャラクターにまかせたいという想いがあります。自分たちが作っているのですが、なでしこやリンがこう動いたからそれを追っている、そんな不思議な感覚があります」と語り、「なるほど、そう動くのか!」という錯覚のようなものが頻繁に起きるとも教えてくれた。
また、本作は”音”もポイントだと京極監督は胸を張る。「映画館の音響で聴くのはやはり特別。5.1チャンネルで最適に聴こえる形で収録しました。キャンプをしているとき、夜は本当に静かです。そのなかで、焚き火の音や料理する音、食べる音が響く。そういった効果音は、映画館では本当に繊細で立体的に聴こえます。テレビシリーズより遥かに手間もかかり、収録も大変でしたが、音響チームがものすごくがんばってくれたので、こだわって良かったなと思っています。聴きごたえのある“音”を堪能してほしいです」。