"癒し"だけじゃない!田中圭最新作『ハウ』や『僕のワンダフル・ライフ』など、"学び"も得られる犬映画

コラム

"癒し"だけじゃない!田中圭最新作『ハウ』や『僕のワンダフル・ライフ』など、"学び"も得られる犬映画

“ワン”と鳴けない犬と、気弱な青年の絆を描いた感動作『ハウ』が、8月19日(金)より公開される。心に傷を負った民夫(田中圭)は、上司の勧めで出会った保護犬・ハウとの日々によって笑顔を取り戻すが、ある日突然ハウがいなくなってしまう。やがてハウに似た犬が事故死したという知らせが届くも、現実を受け止められず、その姿を追い求める民夫。だが、ハウは遠い青森の地で生きていた!民夫に会うべく青森から神奈川を目指して走りだすハウ…。2人は無事に再会できるのか?

そんな、人と犬との“かけがえのない絆”は、古今東西で幾度となく描かれてきたテーマ。古くは何度も映画、ドラマ、アニメ化もされた「名犬ラッシー」などが思いだされるが、ここでは近年私たちを魅了してきた“犬映画”を振り返ってみたい。

犬映画といえば!ラッセ・ハルストレム作『HACHI 約束の犬』『僕のワンダフル・ライフ』

【写真を見る】毎日駅前で飼い主を待つ、秋田犬のハチ。忠実すぎる姿に涙腺がゆるむ…(『HACHI 約束の犬』)
【写真を見る】毎日駅前で飼い主を待つ、秋田犬のハチ。忠実すぎる姿に涙腺がゆるむ…(『HACHI 約束の犬』)[c]Everett Collection/AFLO

米アカデミー賞ノミネート作『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』(85)で、主人公の少年にとっての犬の存在を象徴的に描き、強い印象を残したスウェーデン出身の監督ラッセ・ハルストレムは、その後ハリウッドで何度も犬映画を手掛けることに。『HACHI 約束の犬』(09)はご存知、日本の『ハチ公物語』(87)を、現代の米東海岸に舞台を移した物語。大学教授パーカー(リチャード・ギア)と秋田犬の仔犬の出会い、絆が育まれていく様が描かれる。秋田犬の自尊心の高さ、一度信頼した相手に示す忠義心の深さが感動を深めた。

最愛の飼い主にもう一度会うため、生まれ変わって飼い主を探す犬の奮闘に泣ける!(『僕のワンダフル・ライフ』)
最愛の飼い主にもう一度会うため、生まれ変わって飼い主を探す犬の奮闘に泣ける!(『僕のワンダフル・ライフ』)[c] 2016 Universal Studios and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

僕のワンダフル・ライフ』(17)は、保護したゴールデンレトリバーの仔犬ベイリーと少年イーサンが共に成長していく様子を軸に、やがて大人になりイーサンに看取られたベイリーが、その後も別の犬(時にコーギー、時にシェパードなど)として何度も転生しながらイーサンとの再会を試みる物語。死してなお…という着眼点は、新たな驚きと感動を呼んだ。初老のイーサンのもとにようやくたどり着くベイリー、セントバーナード系の犬をベイリーだと気づくイーサン、互いの想いの深さや絆には涙が止まらない!人間の目から犬との絆を描くだけでなく、犬目線からも人間を見つめるという、双方向の想いが映しだされるハルストレム作品は、互いの絆の深さを観客により強く実感させる。ハルストレムが製作にまわった続編『僕のワンダフル・ジャーニー』(19)は、イーサンの初恋相手の孫娘を守るため、再び生まれ変わったベイリーが奮闘する。運命的な犬との絆に感動したい時は、ハルストレム映画を選べば間違いなし!

「もう一度会いたい!」その気持ちでただ走り続けるハウ
「もう一度会いたい!」その気持ちでただ走り続けるハウ[c]2022「ハウ」製作委員会

そんな犬と人との絆の強さは、『ハウ』でも描かれている。ただ「もう一度会いたい」という一心でひた走るハウと、家のなかで、街なかで、いつでもハウの面影を追ってしまう民夫の姿に、心打たれるはずだ。

日本映画にも名作が!『クイール』『犬と私の10の約束』

様々な苦労を重ねながらも、立派な盲導犬となっていくクイールに感涙必至…(『クイール』)
様々な苦労を重ねながらも、立派な盲導犬となっていくクイールに感涙必至…(『クイール』)『クイール』 発売中 DVD3,080円(税込) 発売元・販売元:松竹 [c]「クイ―ル」フィルムパートナーズ

『ハチ公物語』を生んだ日本でも当然、昔から様々な角度で人と犬の絆が描かれてきた。生まれた時から盲導犬となる運命が決まっていたラブラドールレトリバーの仔犬“クイール”の成長と生涯を描いた『クイール』(03)は、いかに犬が人の力になってくれるかを実感させられると同時に、犬の幸せについても深く考えさせられる。クイールに少しずつ心を開いていく犬嫌いの視覚障害者に小林薫、クイールの幼少期と晩年を共に過ごすパピー・ウォーカーの夫婦に香川照之と寺島しのぶと、錚々たる演技派俳優がそろっており、見応えも十分だ。監督は、『血と骨』(04)や『刑務所の中』(02)の崔洋一が担当している。

「犬の十戒」をモチーフに、動物を飼う責任を問いかける『犬と私の10の約束』
「犬の十戒」をモチーフに、動物を飼う責任を問いかける『犬と私の10の約束』『犬と私の10の約束』 発売中 DVDプレミアム・エディション4,180円(税込) 発売元・販売元:松竹 [c]2008「犬と私の10の約束」フィルムパートナーズ

一方、犬好きは読むだけで泣けてくる、作者不明の“犬と生活をするうえでの10の戒め”という、犬から人間に語りかける英語の詩がある。それをモチーフにした『犬と私の10の約束』(08)は、改めて犬(動物)を飼うという行為には、いかに大きな責任が伴うか、それを人間はもっと自覚すべきであるということを優しく教えてくれる。迷い込んできたゴールデンレトリバーの仔犬ソックスと、母を亡くした少女あかりの10年にわたる絆を追った感動作で、大人になったあかりを田中麗奈、幼なじみを加瀬亮、あかりの父を豊川悦司が演じる。人間の都合や勝手で犬を振り回してしまう姿に、身に覚えのある痛みが疼きつつ、それでも変わらず信じ愛し続けてくれるソックスに涙が止まらない。


シェルターで穏やかに生活していためぐみ(モトーラ世理奈/左)。彼女はハウと大きな関係があるようで…(『ハウ』)
シェルターで穏やかに生活していためぐみ(モトーラ世理奈/左)。彼女はハウと大きな関係があるようで…(『ハウ』)[c]2022「ハウ」製作委員会

“動物を飼うことの覚悟”については、『ハウ』のなかでも触れられている。ハウももともとは保護犬であり、保護犬活動を行う民夫の上司の妻、麗子によって民夫と引き合わされることに。真摯に命と向き合うことの大切さ、純真に人を信じる犬の無垢さが描かれ、はっとさせられるテーマ性も感じさせられる。

ちなみに『クイール』や『犬と私の10の約束』も含め、先述の『ハチ公物語』など日本を代表する犬映画を手掛けてきたのが、ドッグトレーナーの宮忠臣。犬たちによる数多くの名演を引きだしてきた彼は、『ハウ』の主演で、ハウ役を務めたベックのトレーニングも担当した。名匠による訓練を経て、映画初出演ながら見事大役を果たした、ベックの演技にも注目してもらいたい。


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