"癒し"だけじゃない!田中圭最新作『ハウ』や『僕のワンダフル・ライフ』など、"学び"も得られる犬映画
犬と共に成長していく『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』
コメディでも犬は大活躍!オーウェン・ウィルソン&ジェニファー・アニストンがW主演した『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』(08)は、子育ての予行演習のつもりでラブラドールレトリバーの仔犬を飼い始めた新婚カップルと、やんちゃすぎる仔犬マーリーとの日々が描かれる。あまりのやんちゃぶりに時にウンザリするが、どんなおイタをされても罪のない瞳を見たらほだされずにいられないのもまた事実。夫婦や、生まれてくる子どもたちを含めて、家族の在り方、マーリーとの関係や絆など、ドタバタだけではない落涙必至のせつない展開も待ち受ける。犬を飼おうか迷っている人に、かなりおススメしたい“あるある満載”のワンコ映画だ。
アニメならではのストーリー『ペット』『犬ヶ島』
ペットを愛する人たちに大受けしたのが、「ミニオンズ」シリーズなどで絶好調のイルミネーションスタジオが手掛けた『ペット』(16)。ペットを飼ったことがある人が知りたくてしかたのないこと、“自分の不在時、ペットはなにをしている?”という疑問を、笑いを交えて目撃させてくれる愛すべき作品だ。マウントを取り合っていた、先住犬マックスと保護されてきた大型犬デュークが、大都会の真ん中で迷子になり、近所のペットたちと大冒険を繰り広げる。あり得ないと知りながらも、動物たちの大活躍に快哉せずにいられない。
一方、鬼才ウェス・アンダーソンが近未来の日本を舞台にストップモーションアニメで作り上げた『犬ヶ島』(18)は、相変わらず才気走った世界観に唸らされる。犬インフルエンザが大流行し、犬たちはごみ処理場「犬ヶ島」に隔離されることに。12歳の少年は一人、愛犬を探して島に向かうが…。実写ではとても表現し得ない世界観、犬たちの言動、そして予想を超えた展開に、大いにイマジネーションが刺激され、大人でも夢中になってしまう。
もちろん『ハウ』は実写映画だが、石田ゆり子の包み込むような優しいナレーションによってハウの心情が語られる構成になっており、まるで絵本を読んでいるような感覚になる瞬間も。ベックの見事な演技も相まって、そのある意味で非現実的な描かれ方は、ファンタジー映画を楽しむ気持ちと似ているのかもしれない。
『ハウ』で改めて感じる、犬映画の魅力
私たちの人生を、より豊かにしてくれる犬たち。癒しだけではなく、誰もが持つべき思いやりや絆の尊さを、改めて気づかせてくれる存在でもある。『ハウ』もまた、ひょんなことから青森に運ばれてしまったハウが、民夫の住む横浜を目指してひた走り、その道中でいろいろな人々と出会い、温かな気持ちを分け与えていく。放射能汚染地域から避難しイジメに遭う女子中学生(長澤樹)、夫のDVでシェルターへ逃げ込んだ女性(モトーラ世理奈)、夫に先立たれて一人で傘屋を営む女性(宮本信子)。彼女たちはハウから、一歩前に踏みだす勇気を与えられ、笑顔を取り戻す。
さりげなくも鋭く社会性があるテーマが差し込まれるのも、かわいいだけではない、ピリッと引き締まった本作の味わいだ。なるほどハウが「ワン!」と鳴けないという設定自体、人間の身勝手さを強く示す象徴。それでもハウは恨まず、真っ直ぐな眼差しを向ける。そんなハウがもたらしてくれる優しさと温かさ、幸せな気分に、疲れた心をまるごと包み込まれてほしい。
文/折田千鶴子