これぞサマームービー!『ゴーストブック おばけずかん』、臨場感抜群のワンカット『ボイリング・ポイント/沸騰』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、山崎貴監督最新作のジュブナイルファンタジー、約90分間ワンカットで切り取る高級レストランの舞台裏、 ジョー・カーナハン監督が手掛けるバイオレンス・アクションの、臨場感抜群の3本。
大いに夏休み気分に浸れるサマームービー…『ゴーストブック おばけずかん』(公開中)
どんな願い事もかなえてくれる「おばけずかん」を手に入れた子どもたちの冒険ファンタジー。『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)で日常と地続きにある魑魅魍魎の世界を描いた山崎監督がAIを導入した最新VFXを駆使し、今度は日常と少しだけ違うお化けたちのいる世界を作り上げた。
ある日突然、自分たちの住む世界そっくりのパラレルワールドに迷い込んでしまった登場人物たち。ぐっと成長した『万引き家族』(18)の城桧吏を中心に子どもたちは皆、個性豊かで、伸びやかな演技が微笑ましい。少々遠めから彼らを見守るのは、頼りない代用教師役の新垣結衣。元気な子どもたちにたじたじになりながら、ジェネレーションギャップを自虐ネタに変え、距離を縮めていく姿がなんともガッキーらしく魅せられる。子どもは純粋に、大人は可能性しかなかった子ども時代の気持ちを取り戻し、大いに夏休み気分に浸れるサマームービー。主題歌は星野源というまさかの夫婦タッグも話題。(映画ライター・高山亜紀)
“体感”という意味では最高レベルの仕上がり…『ボイリング・ポイント/沸騰』(公開中)
全編ワンショットの長編映画は過去にも何本かあったが、ここまでワンショットを効果的に使った作品は珍しい。ロンドンの人気レストランで最もにぎわうクリスマス前の一夜を、カメラがまったく途切れずに動き回る本作は、約90分間、観ている我々も店の従業員になった気分で、その喧騒に巻き込まれていく。“体感”という意味では最高レベルの仕上がりだ。
オーナーシェフの個人的な悩みや、厨房やバーカウンターのスタッフ、ウェイターたちの個性。突然来店したグルメ評論家や、やたらと料理に文句を言う客といった数々のエピソードが、流れるようなカメラワークとともに鮮やかに適材適所に配置される。フィリップ・バランティーニ監督はレストラン勤務経験もあり、知られざる実態や裏事情に驚かされる瞬間も数多い。オーナーシェフ役のスティーヴン・グレアムを筆頭に、俳優たちがレストラン従業員にしか見えない、なりきり度合いも奇跡的!(映画ライター・斉藤博昭)
鮮やかなクライマックスで噛み締めるあの充実感…『炎のデス・ポリス』(公開中)
面白い!面白い!面白い!命を狙われている詐欺師と彼を追う冷酷非情な殺し屋、イカれたサイコパスとマフィアの息がかかった悪徳警官が、砂漠の小さな警察署に集結して火花を散らす!しかも警察署長を始めとした警官たちは早々に皆殺しになり、元軍医で、新人ながら44口径の大型銃ブラックホークをブッ放す早打ちの名手でもある女性警官ヴァレリーがたったひとりで悪党たちに立ち向かうのだ!!
『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(10)などの快作で知られるジョー・カーナハン監督の最新作は、そんなシンプルだけど、放っておいてもテンションが上がる最高のシチュエーションがたまらない痛快クライム・アクション。『ダーティハリー2』(74)のテーマ曲が流れるオープニングから、1970年代のハリウッド映画の荒々しいテイストが全開!悪党どもが警察署に次々に集まってくる展開も巧妙でスピーディなので、観る者も一気に署内の闘いの舞台に引き込まれる。
そこに分かり易い伏線が張りめぐらされ、殺し屋役のジェラルド・バトラーを始めとした演技派クセ者俳優たちが心理戦を繰り広げるのだから、面白くならないわけがない!!はたして最後に笑うのは誰だ!? 鮮やかなクライマックスで噛み締めるあの充実感は、観た人にしか分からない。(映画ライター・イソガイマサト)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼