「27歳のいまだからこそ、笑いを取る役を演じられた」京本大我が語る、俳優業への想いの変化
「『今日から俺は!』みたいな作品にも挑戦してみたいです」
初挑戦尽くしだった本作は、俯瞰で演技を思考する京本が持ち味を発揮するには、なかなかにハードルの高い環境だったといえるかもしれない。だがひるむことなく食らいついた結果、「いま“演じる”ことに近年で一番興味がわいている」という領域にまで到達できたそうだ。「今回の経験を通して、やっぱり場数なんだなと感じました。これまで映像の経験があまりできていなかったことの代償といいますか、それもあって『もっと映像をやりたい』『もっと演じたい』という意欲がこれまで以上に湧いてきたんです。そして、近年役の幅が広がってきていることも大きいです。数年前まではひ弱な皇太子といった、王子様的な役をよくやらせていただいてたのですが、『ニュージーズ』という舞台でガサツさのあるリーダー的な役を担った時に、より演じるおもしろさを感じられました」
京本は「今回の林原も、10代のころだったら素直に演じられなかった気がします」と続ける。「昔だったら、ナルシストでもちゃんとかっこいい役ならいいけど、笑いを取る役はイヤだという思考になっていたと思います。でもいま27歳になって『これで笑っていただけるならうれしい』と思えるようになった。いろいろなことを経て尖りが削がれたからこそ、今回の役にすごくやりがいを感じられたし、自分が林原という役を演じることで、作品に少しでもいいエッセンスを与える役割を果たせたら…という想いで取り組みました」
ただ、コミック・リリーフ的なポジションを理解しつつも、役を生きることもあきらめないのが京本の流儀。『TANG タング』の世界における「林原のリアリティ」を細部にいたるまで見極め、役に奥行きをもたらせていった。「林原は俯瞰的に見たらナルシストなキャラクターですが、本人はそこで生きている。気取った口調で『カフェインを取らないことにしているんだ』と言うシーンにしても、別にウケをねらうつもりじゃなくて、真面目に自分の生活スタイルを語っているだけなんですよね。来客中にしょっちゅう鏡で自分をチェックしているシーンにしても、たとえお客さんがいなくても普段からやっているかもしれない。映画で切り取られるのはあの瞬間しかありませんが、描かれていない林原の生い立ちや人生を考えて、人物像を膨らませられるのは自分だけ。そういったディテールはこだわりました」
「本人はいたって真面目なのに笑えるといった意味では、『今日から俺は!』みたいな作品にも挑戦してみたいです。どんどん意欲が出てきています」。どこか晴れ晴れとした表情でそう語る京本。本作の現場では「二宮くんは気さくに話しかけてくださって、そのトーンのまま本番の芝居を始めるのがすごかったです。それぐらい肩の力が抜けているからこそ、ナチュラルな芝居ができるんでしょうね。短い時間でしたが勉強になることばかりでした」と先輩の薫陶を受けた京本が、今後目指す俳優像とは?
「僕は昔からレオナルド・ディカプリオが大好きなんです。『タイタニック』や『ロミオ+ジュリエット』のような王子様キャラから『ディパーテッド』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のようなものまで、演じられる役の幅が本当に広い。僕自身もそうありたいと思っていて、彼が出ている作品を観まくって勉強しています。日本の俳優であれば、藤原竜也さんの映像作品は最新のものも含めて網羅しているくらい大好きです。藤原さんもシェイクスピアの舞台の印象がありながら、映画、ドラマと映像でも活躍されていて、役によって芝居の大きさは調整されているかと思いますが、いい意味でご自身のスタイルを崩していない。理想的な在り方ですし、目標ですね。でも、口で言っているだけではなく一歩ずつでも近づいていくには場数を踏むしかない。いまからでも吸収できるものを一つでも増やしていきたいですね」
取材・文/SYO