「老いるたびに価値を上げる“ヴィンテージデニム”のような人間に」草なぎ剛が語る、これからの理想の生き方
「『サバカン SABAKAN』は、ナチュラルな自分の感覚を取り戻させてくれる」
「子ども時代に限らず、大人になっても熱中できることがあれば楽しめる」と語ったうえで、草なぎは「でも大人って、なにをするにもお金がかかって仕方ないんだよね」と、いたずらっぽい笑顔を浮かべつつ、自虐的なエピソードも交えながらこんな話を披露してくれた。
「友達と会うにしても『あの店はシャンパンがないからなあ…』とかつい考えちゃう自分もいて、『いや、会うのが目的だろっ!』って言いたくなりますよ(笑)。たまに、インスタグラムなんかでレアなヴィンテージのアイテムを見つけるとすぐ気になっちゃうんだけど、それこそボタン一つ違うだけなのに、何十万円も変わってきたりするんですよ(苦笑)。でも、そんな時に『サバカン SABAKAN』を観て自転車をこいでるだけで楽しかった子ども時代のことを思い出すと、ナチュラルな自分の感覚を取り戻せるというか。『いくら好きなモノでも、そこまで入れ込みすぎるのは違うんじゃない?』って、少し冷静になれる気がします。僕が集めたヴィンテージコレクションなんかも『別に全部あげちゃってもいいよ』と思えたり…。なんて、もちろん絶対にあげないですけどね(笑)。まあ、つまり大人になると、子どものころより2倍人生が楽しくなるってことですよ」
去る7月9日に48歳の誕生日を迎えたばかりの草なぎ。「これまであまり先のことは考えてこなかった」というが、本作に出演したことで「自分の生き方を真剣に見つめ直してよりハッピーなものへと改革して行こうと思える、いい機会になりました」と話す。
「人生100年時代とか言われるけど、MAXで生きて100年だろうから、もうすでに半分以上は過ぎているかもしれないですよね。よりハッピーに残り時間を過ごしていくためには、自分はこれからどんな人たちと、どんなことをして生きるべきなのか。そんなことを考えること自体、ワクワクしながら楽しめたらいいと思う。僕の場合は仕事も好きだし、『もっといろんな作品に出てみたい』という欲もある。それこそ幼いころは『少年隊』に憧れて、ステージの上で歌ったり踊ったりするアイドルから出発しているから、やはり編集がきかない生の舞台に出て表現している時が、僕にとって一番幸せな時間なのかもしれません。幸いなことに、僕らみたいな仕事はアスリートとは違って現役が長いから、90歳になっても輝ける役はあると思うし、自分の努力次第で『死ぬまで主役になれる』すごく恵まれた世界だったりもするわけで。あとほかに必要なのは、縁と、運と、周りの力(笑)。僕も身体が動く限りはずっと板の上に立ち続けていたいから、これからも元気で誕生日を迎えられるようにしっかり準備しなければ!」
よく通る張りのある声を響かせながら、「元気があれば、なんでもできる!」と笑う草なぎは、年齢を重ねるにつれ、若いころよりも年齢を重ねた現在のほうが、より魅力を増しているようにも映る。「僕は、使い込めば使い込むほどにいいものになる、“ヴィンテージデニム”みたいな生き方が理想なんですよ。ダメージすらも価値が高くなると思えば、歳を取っていくことにも希望が持てるでしょ。作品とともに、再生と老いを繰り返しながら、より一層価値を上げていく…。最終的に目指すところはいぶし銀の“草なぎヴィンテージ”かな(笑)」
取材・文/渡邊玲子