『バイオハザード:ヴェンデッタ』の清水崇Pと辻本貴則監督が語る撮影秘話|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『バイオハザード:ヴェンデッタ』の清水崇Pと辻本貴則監督が語る撮影秘話

インタビュー

『バイオハザード:ヴェンデッタ』の清水崇Pと辻本貴則監督が語る撮影秘話

サバイバルホラーのフルCG長編アニメ映画最新作『バイオハザード:ヴェンデッタ』が5月27日(土)より公開となる。本作でエグゼクティブプロデューサーを務めた清水崇(『呪怨』シリーズ)と、辻本貴則監督(『THE NEXT GENERATION パトレイバー』)にインタビュー。

本作は、シリーズ累計販売本数7700万本超えのゲームシリーズ『バイオハザード』の世界観を基に、歴代の人気キャラクターたちが活躍する完全新作ストーリー。クリス・レッドフィールドやレオン・S・ケネディ、レベッカ・チェンバースが、新型ウイルスによるバイオテロの脅威に立ち向かう。脚本は小説家で漫画原作者でもある深見真が手がけた。

最初に辻本監督は、清水プロデューサー不在のミーティングでの容赦ないやりとりに驚いたそうだ。「その時、本作のプロットに清水さんが赤入れをしたものを見せられたんですが、ワーッと血のような赤色でびっしりと直しが入っていたんです。厚さは倍くらいになっていました。なるほど、これが清水崇かと。こうじゃないとハリウッドへは行けないんだなと感心しました」。

清水プロデューサーはタジタジになり「参加できなかったので、意見と提案をわかりやすく書き込んだだけですよ」と苦笑い。

辻本監督は「清水さんはきっと怖い方だろうと思っていたんですが、実際にお会いしたらすごく物腰が柔らかい方で、逆にびっくりしました。僕は最初、誰にヘコヘコすればいいのかなと思って周りを見ていましたが、途中から『ああ、そうか。全員にだ』と気づいたんです」と笑う。

清水プロデューサーも、辻本監督が様子をうかがっていることには気づいていたそうだ。「でも、辻本監督は実際製作に入ってからはバッサリと台本を削っていきました」。

辻本監督は、台本のト書きの多さに戸惑ったそうだ。「分量が明らかに多かった。90分の映画のはずなのに、2時間半以上の超大作の台本になっていた気がして、これはヤバイなと。それでどこを削るべきかを率先して提案し始めました。それくらいから、ようやく監督らしい仕事をしているなと思ったんです」。

清水プロデューサーは、辻本監督の指示がとても的確だったと評価する。「深見さんは『バイオハザード』シリーズに詳しく、ゲームも全てクリアしている方で、辻本監督のやりたいアクションにも執着しているので、銃器の見せ方まで台本に指示が入っていたんですが、とにかく長くて。でも、見せ場を削ったら意味がない。だから他を削った感じですよね。僕はアクションやヒロインと敵のドラマ、現実社会に通じる不安を暗示した社会的な部分、悪党のサイコ的な魅力はすべて入れてほしいと思っていたけど、辻本監督はそのバランスを取るのが本当に上手かった」。

辻本監督は清水プロデューサーの気配りに感謝する。「僕が監督するということで、清水さんはすごく気を遣ってくださいましたよね。ホラー部分はちゃんと絵コンテを監修していただいたけど、いざ現場が動くと放置プレイというか僕の自由にさせてくれた。また、いろんな板挟み的な役割もしてくれたんです」。

清水プロデューサーは「基本、やっぱり映画は監督のものだから」と持論を述べる。「僕が初めてハリウッドで『THE JUON/呪怨』(04)を作った時、プロデューサーがサム・ライミでしたが、好きなことをやらせてくれたり、誰かともめていると間に入って助けてくれたりしてすごく助かったんです。同じように普段監督をしている僕のような人間がプロデューサーとして立つ場合も、船頭は1人じゃないといけない。だから放置プレイにしました」。

また、清水プロデューサーは、実写畑の辻本監督ならではのアクションの良さについても指摘する。「辻本監督はアクションが得意ですが、基本は実写でできないような動きはしないんです。フルCGだから、カメラワークも好きにできるはずなんですが、敢えてそうしない。でも、いざ見せ場のシーンだけは、現実にありえないようなカメラワークにして迫力を出すんです。そのメリハリはさすがだなと思いました」。

辻本監督は「うれしいです」と照れる。「やっていくうちにわかったことですが、実写ではない3DCGの映像に、実写ではできないようなカメラワークをつけると、単なる軽い画になってしまうんです。特に僕らは映画を見慣れているから、よけいに違和感が出てしまうのでやめました。本作は、実写映画を撮っている人間が、フルCGアニメ映画に真面目に取り組んだらどうなるかということで、最後まで実写感覚を大事にしながら手加減なしで挑みました。シリーズを観ていなくてもわかりやすいエンターテインメント映画に作っていますので、食わず嫌いにならずにぜひ見てください」。【取材・文/山崎伸子】

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