妻夫木聡と蒼井優「カップル役はもはや新鮮ではない」
山田洋次監督作『家族はつらいよ』(16)で妻夫木聡、蒼井優が演じた仲良しカップルが、続編『家族はつらいよ2』(5月27日公開)で遂に夫婦へ。互いに「カップル役は新鮮ではないです」と笑い合う2人にインタビューし、山田組の撮影秘話や、嫁についての理想像について聞いた。
前作で熟年離婚騒動を乗り越えた周造(橋爪功)たち平田家。周造は自分の車にあちこちぶつけた傷が目立つようになったことで、家族から運転免許証を返上するように注意されるが、聞く耳を持たない。
『東京家族』(13)、『家族はつらいよ』の2作に続き、妻夫木と蒼井は、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵らと共に絶妙なアンサンブル演技を見せている。
妻夫木は周造の次男・平田庄太を、蒼井は庄太の妻となった憲子を演じたが、晴れて夫婦になったことで、以前は見えなかった一面が顔を出すようになった。
蒼井が「今回の庄太は、若干こずるいところが出たよね。言いにくいことを自分で言わずに、人に言わせるところとか」と指摘すると、妻夫木も「結婚して本性を表した感じがするよね」とうなずく。
「前作では、平田家の緩衝材的な役割をしていた庄太だけど、今回から毒づいてきて、僕らも段々“崩壊家族”の一員になってきたかなと。いい意味で前回は結婚前だから緊張感があったのですが、今回は役に対してゆとりみたいなものが少し出た感じがしました」。
蒼井は「橋爪さん演じるお義父さんが“憲子”と呼んでくれたのがうれしかったです」と語る。「前作とは明らかに役同士の距離感が違う。自分が結婚したわけじゃないんですが、嫁いだんだなという感じがしました。また、夏川さん演じる長男の嫁との同志感も生まれていたし、シリーズ化とはこういうことなんだなと思いました。前作と今回の間は演じていないんだけど、『家族はつらいよ2』をやることによってつながっていくんですね」。
今回、中盤でひと騒動が起こり、看護師役の憲子が大活躍をする。妻夫木は「素晴らしい嫁です。きっと世の中の男性は、こういう人に嫁に来てもらいたいという理想像なんでしょうね」と称えると、蒼井も「自分が親だったとしてもこういう人にお嫁に来てほしい」と同意する。
3作続けてカップルや夫婦役を演じた2人。妻夫木は「もはや新鮮ではないけど、良い意味で言うと、いろんなことを気にしないでいっしょにいられる(笑)。優ちゃんが奥さん役ということで僕は助けられています」と絶大な信頼を寄せる。
蒼井も同じ気持ちだ。「自然に夫婦になれる感じはありました。他の方ならいかにも慣れ親しんでいるという感じを出さなきゃいけないけど、お互いをぞんざいに扱い合っても冷たい空気にはならないんです」。
妻夫木たちによると、前作では初期の台本にキスシーンがあったが、なぜか決定稿でカットされたそうだ。「まあ、そういうことじゃないってことでしょう。僕もそんな気がしていたんですが」と妻夫木が言うと、蒼井も「妻夫木くんとは1回もキスシーンをしたことがない。手をつなぐなどのスキンシップはいっぱいありましたが。でも、普通はそっちの方が恥ずかしいよね」と笑い合った。
今作では喜劇部分がパワーアップしているという妻夫木。「山田監督から、腹を決めて喜劇をやるぞ!という感じがすごく伝わってきました。前作は久しぶりの喜劇で、僕たち自身もまだ『監督、おかえりなさい』という感じでしたが、今回はタガが外れたように笑いを求めている感じがありました」。
蒼井も「現場でも笑いの要素を少しでも足そうとされたし、思っていたものと違うとなった時、舵を切るのもすごく早かった」と感心する。
妻夫木は「山田監督も言われていたけど、いまは映画を観に行って気兼ねなく笑えるという時代ではなくなってきたのかなと。でも、山田監督はそういう時代に育ち、ご自身も笑いが絶えないものをたくさん観てこられたし、監督としてそういう喜劇を作ってこられたと思うんです。だから今回も安心して観に来てもらいたいし、大いに笑ってほしいです」と力強く締めくくった。【取材・文/山崎伸子】