「軽い気持ちで観れる映画こそ、いますごく大切」『犬も食わねどチャーリーは笑う』 香取慎吾&岸井ゆきのにインタビュー

インタビュー

「軽い気持ちで観れる映画こそ、いますごく大切」『犬も食わねどチャーリーは笑う』 香取慎吾&岸井ゆきのにインタビュー

「映画は思いきり自己投影しながら観る派です」(岸井)

  香取慎吾&岸井ゆきの
香取慎吾&岸井ゆきの撮影/興梠真穂

――劇中の裕次郎と日和のように、お二人もご自分の感情を吐きだしたり、面と向かって相手にぶつけたりはしないタイプですか?

香取「わりと限界までいかないと自分の感情を吐きだせないところは、裕次郎とちょっと似てるのかもしれない。自分でこらえちゃうというか、涙を流したりすることはほとんどない」

岸井「私自身、悩んでいる最中は誰にもなにも言わないです。映画を観ることでストレス発散をしているんですが、自分でもたまに『このやり方は不健康だなあ』と思うことがあるんです。映画の主人公と重ね合わせることで、自分のなかのモヤモヤを解消していたりするので」

香取「映画の登場人物に自己投影しちゃうんだ」

岸井「そうなんです。つい主人公と一緒に問題解決した気になってしまうんですが、現実の自分は映画館の椅子か自宅の椅子に座っているだけで、なに一つとして根本的な解決にはいたっていないから」

 香取慎吾&岸井ゆきの
香取慎吾&岸井ゆきの撮影/興梠真穂

――俳優目線で客観的に観ている部分もありますか?

岸井「ないです! 常に完全に異世界に入り込んで観ています」

香取「へー!」

岸井「逆に言うと、途中でカット割りとかが気になり始めたりすると『この映画、私にとってはあんまりおもしろくないんだな』てことなのかもしれません」

香取「僕は映画を観ながら常にカット割りとかカメラ位置がめちゃくちゃ気になります。『ここは円形のレールかあ…』とか考えながら観てる(笑)」

岸井「え~!?すごい!」

香取「いや、別に全然すごくない(笑)。もうそんなふうにしか観られなくなっちゃってるだけで。でも一方で普通にちゃんと楽しめている自分もいるから、カット割りを気にして客観的に観ている自分と、主観で観ている自分とが、同時に観ている感じかもしれない」

岸井「たしかに私も『トップガン マーヴェリック』を観ている時なんかは完全に入り込んじゃって、自分が操縦している気分でわんわん泣くんですけど、あとからその映画のことを思い出すとカット割りも覚えてたりするから、潜在的に刷り込まれているのかもしれません」

――もはや自然とそういう観方ができてしまうと。

香取「僕なんかはもう、ずっとエンタメの世界で生きてきてしまった生き物なので(笑)。そういう観方が身体に染み付いちゃってるんですよね」

  香取慎吾&岸井ゆきの
香取慎吾&岸井ゆきの撮影/興梠真穂

――では最後に、改めて本作の見どころをお願いします。

香取「この映画ってまさにいまの時代にピッタリの映画だと思うんですよ。ここ最近『この映画からこういう思いを受け取ってほしい』みたいな、いわゆるメッセージ性の高い作品が増えているような気がするんだけど、この映画にはそういったメッセージがなにもない(笑)」

――言い切ってしまって、いいんですか(笑)?

香取「いいんです(笑)。すごく軽く描いている」

――でも、観ていて結構しんどい部分もありましたよ。

香取「まぁ、たしかに(笑)。『これってホラー?』と思うようなところもありながら、コメディなのに泣けちゃったりするところもあって。皆さんの明日がなにか一つでも変わるような映画になったらいいなっていうくらいだから、作品としては全然重たくない。でもそれって、いますごく大事なことだと思うんですよね。現実世界ではコロナ禍だったり、近くで戦争が起きていたりして、とても一人では抱え切れないような出来事が多すぎる。でもこの映画は軽い気持ちで笑って観てもらえる。おいおい『あの映画よかったなあ』って思い出してもらえるようなものが作れた気がするから、そこがいいなと思っているんです」

 夫婦それぞれが抱える思いや問題が、リアルなタッチで笑いを交えつつ描かれる
夫婦それぞれが抱える思いや問題が、リアルなタッチで笑いを交えつつ描かれる[c]2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

――本作における新たな挑戦を挙げるとしたら、どこになりますか?

岸井「いままでにない経験をしたという意味では、肩車のシーンですかね」

香取「実はこの映画にはワイヤーアクションがあるんです。観た人は『どこで?』と思うかもしれないですけどね」

岸井「そう!ワイヤーアクションしてるんですよ(笑)!」

――香取さんの挑戦は?

香取「僕はいつも別に挑戦とかもあんまりしないんですけど…でもまぁ、普通はいくらカッコ悪い役のお芝居でも、カメラの前だとカッコつけずにいられなくて、どうしてもカッコよく写ろうとしてしまうものなんだけど、あえて今回はそれを極限までなくしていくっていうのが、自分なりの挑戦だったのかもしれない。といっても、わざとやるんじゃなくて、あくまで偶然に頼るというか。歩いている時にたまたま足が絡まってコケないかなぁとか、スマホをポケットから出す時にちょっと引っかからないかなぁとか思ったりするんだけど、僕は経験値が高いから、いつも自然ときれいに見えるような動作をしちゃうんですよ(笑)。それをなるべく外すようにするのが、自分でやっててもちょっとおもしろかった」

――なるほど、カッコ悪くて嫌な裕次郎を演じるのが、香取さんの挑戦だったわけですね。実は編集部の担当者とも「裕次郎がムカついてしょうがなかった!」と話していたところなんです。

香取「でしょう?」

岸井「わかる!」

――「スーパーアイドルの香取慎吾が演じているのに、ここまで観客をムカつかせられるのがすごい!」って(笑)。

香取「よかった! 最高の褒め言葉ですよ、それ」

取材・文/渡邊玲子

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