中村文則、原作映画特集に感謝。又吉直樹は20代に「取り憑かれたように読んでいた」『銃』の映像表現を絶賛

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中村文則、原作映画特集に感謝。又吉直樹は20代に「取り憑かれたように読んでいた」『銃』の映像表現を絶賛

京都で10月15日、16日の2日間にわたって開催されている「京都国際映画祭2022」。初日となる10月15日に、小説家中村文則のデビュー作を原作とした『』(19)の上映と舞台挨拶が、京都市のヒューリックホール京都にて行われた。

「京都国際映画祭2022」にて『銃』の舞台挨拶が開催された
「京都国際映画祭2022」にて『銃』の舞台挨拶が開催された[c]吉本興業

どこにでもいそうな一人の大学生が、河原でたまたま銃を拾ったことがきっかけで銃に心を支配され、徐々に狂気が満ちていく様子を描いた『銃』。2019年に公開された本作は、原作に惚れ込んだ奥山和由プロデューサーにより製作され、『百円の恋』(14)などで知られる武正晴監督がメガホンを務めた。主人公トオルを村上虹郎が熱演し、フィルム・ノワールの映像表現によって人間を追及していく、純文学性を持った質の高い作品として描かれている。

2002年に中村文則が発表したデビュー作を映画化した『銃』
2002年に中村文則が発表したデビュー作を映画化した『銃』[c]吉本興業

上映終了後の舞台挨拶には、奥山プロデューサー、武監督、原作者の中村と親交の深い又吉直樹が登壇し、中村はリモートで出演した。20代の時に『銃』の原作を読んだという又吉は、「取り憑かれたように読んでしまった」と当時受けた衝撃を明かした。20代のころから警察に追われる夢をよく見ていたと又吉は、「そうした自分の感覚とこの話の内容が合っていて、その怖さが映像でもリアルに描かれていてすごく好きです」と、映像化された『銃』を称賛。

奥山プロデューサーが原作に惚れ込んだことで映画化したという
奥山プロデューサーが原作に惚れ込んだことで映画化したという[c]吉本興業

また、奥山プロデューサーは「なんと言っても(原作の)書き出しに誘い込まれた。映画人にとって画がバンと浮かんでくる」と、作品の持つ世界観を絶賛。武監督は、「小説のなかにもありましたが、『人を殺してしまうと世界が変わってしまう』という一文を、映像としてどうやって表現するかというのが非常に魅力的で、いいチャンスを与えてもらったと思いました」と、同じく原作の世界観に魅了されたことを明かした。

3人の話を聞いて中村は、「奥山さんは僕のなかでは“伝説”で、その伝説的なプロデューサーの奥山さんから(映画化の)話をいただいて、すごくうれしかった」と笑顔で語った。映画のラストシーンが特に印象的であったと話し、「いち観客として観ても、伝説的なシーン。原作にはないんですが、村上くんが笑うんです。本人に聞くと、無意識に笑ったみたいで。あの笑いは原作者から見てもゾゾッとした」と驚きを語った。

普段から中村と親交があるという又吉
普段から中村と親交があるという又吉[c]吉本興業

最後に又吉は、「昔、中村さんとご飯を食べている時に、『銃』がいつか映画になればいいですねという話をしていたので、おもしろい映画になってよかったなと思います」と感慨深げ。奥山は、「こういう時代だからこそ、中村さんの言葉は沁みるものがあって、だからこそ原作の言葉のまま、脚本にしたものをいつかやりたいと思っています」と新たな展望を明かした。

中村文則の世界観について白熱したトーク!
中村文則の世界観について白熱したトーク![c]吉本興業


武監督は「中村さんは“小説に救われた”とよく言われますが、僕も“映画に救われた”という人間で、映画も小説も人を救うためにあるもの、という中村さんの想いにすごく共鳴しました。『銃2020』もあるのでぜひ観てください」とアピール。中村は「僕の原作の映画は、一般的な日本の映画とは違う質のものになっているので、こういう映画もあるんだなという風に思ってくださればうれしいです」と締めくくった。

取材・文/中野純子

■京都国際映画祭2022
日程:10月15日~16日(日)
場所:よしと祇園花月、ヒューリックホール京都、京都市京セラ美術館、六角堂・池坊ビル、京都大学防災研究所ほか
※10月14日より先行上映開始
※先行しての企画・オンライン上映・展示あり
URL:https://kiff.kyoto.jp/
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