銀河で反乱の蜂起が始まる予感…!肝心の主人公が向かった先は?「キャシアン・アンドー」第7話をレビュー
反乱の“声明”は、民衆のなかに、そしてキャシアンのなかにもなにかを届けたはず
まだまだ煮え切らない生き方を選んでいるのは、主人公であるキャシアンも同じだ。故郷に戻るも彼が起こした事件によって町は帝国の占領下となっている。彼の居場所はどこにもない。愛すべき義理の母であるマーヴァ(フィオナ・ショウ)と手に入れた大金で帝国の目が届かないところへ逃げようとするが「私の頭の中は占領されない」とマーヴァは彼の申し出を拒否する。それどころか、件の強盗事件が彼女の心に火を灯したと語る。彼女は戦うことを選んだのだ。
この物語のひとつのキーワードは「大義」だ。『ローグ・ワン』でキャシアンは「信じる大義のため。それでなければすべてが無意味になる」とジン(フェリシティ・ジョーンズ)に熱く語っていた。しかし、大金を手に入れマイアミ風のリゾート地でリッチな美女と同棲生活を始める彼にはまだそんな「大義」への覚悟を感じ取ることができない。故郷の悲劇、義父クレムの非業の死、そして、マーヴァの本物の言葉。反乱の“声明”は、民衆のなかに、そしてキャシアンのなかにもなにかを届けたはずだ。導火線についた火は今後、どんな爆発を起こすのか。それはひとつ見届けたい今後の大きなポイントになるだろう。
一方で、ヴィラン側の名もなき存在たちも気になる。保安官としての職を失いコルサントの息がつまりそうな巨大団地に帰ってきたシリル・カーン(カイル・ソラー)は母の斡旋でこれまた息がつまりそうな事務職につく。彼の自室にストームトルーパーのフィギュアが並んでいたのはなんとも胸が締め付けられる思いがした。彼も憧れたヒーローにはなれなかった一人なのだ。でも彼にも信念や希望がある。多くの視聴者がそうであるように彼の今後がどうなるのか気にかかる(茶色いジャケットを選んだ理由も…)。
「単なる強盗ではない。あれは反逆の声明だ」と誰より先に気づいた帝国保安局のデドラ(デニース・ゴフ)は、今後キャシアンたちを追い詰める存在となりそうだ。ただ、製作総指揮のトニー・ギルロイが「この物語に憎むべきヴィランはいない」と語るとおり、彼女とて出し抜こうとする同僚と(どう見ても)いけすかない上司に挟まれ、自分のキャリアを守ろうと必死に生きる一人の人間だ。どうしたって応援したくなってくる。関係ないけれど、コルサントの混み合う通勤電車のシーンが挿入されているのもとてもよかった。アナキンが飛び回っていたハイウェイしか知らなかったけれど、大都市コルサントにも慎ましい市井の暮らしがある。
「スター・ウォーズ」という世界で、それぞれの生き方を描く群像劇はクライマックスに向けどう交差し、新しい物語を見せてくれるのか。いよいよ後半戦への期待が膨らむ。それとエピソード終盤、帝国のセキュリティ・ドロイドが登場したのも『ローグ・ワン』ファンは反応したポイントだろう。プログラムを改造したK-2SOに会えるのはまだ少し先のことだろうけれど、これも本シリーズで知ることができるのかもしれない。それも楽しみに待ちたい。
文/梅原加奈