男女の友情、史実に基づくミステリー、豪華キャスト…。魅惑の要素がたっぷり詰まった『アムステルダム』を、編集部&映画ジャーナリストが語る!
「豪華キャストぞろいで、観客それぞれのお気に入りを見つけられる」
神武「男性陣だとジョン・デヴィッド・ワシントンが印象的でした。しっかりした眼差しは、神々しいというか達観した気品みたいなものを感じました。あと、個人的にマイケル・シャノンが好きなので、ユニークな役柄で楽しませてもらいました。とにかくキャストがそろっているので、観客それぞれのお気に入りを見つけられる映画だと思います」
杉原「わかります。ロバート・デ・ニーロとか、マティアス・スーナールツの登場の仕方もキャラクターとしてすごくよかったですね」
平井「豪華キャストについてラッセル監督は、バンドのメンバーみたいだと表現しているんです。小さい広場で演奏をするよと声を掛けたら、豪華なメンバーが集まってきて、みんなで演奏を楽しんだような撮影だった、と表現していました。その日になにを撮るかわからないというスタイルは、ジャズの即興演奏みたいな雰囲気だったそうです」
「3人がアムステルダムで過ごすシーンは、見ているだけで幸福感に包まれる」
下田「すごくお気に入りなのが、メイン3人の友情を描いたシーンの数々。なかでもアムステルダム時代の同居生活は、離ればなれになっても戻って来られる場所を象徴しているせいか、めちゃくちゃ幸福度が高く撮られていたと感じました」
杉原「とにかくヴァレリーがかわいくて、ついつい見とれてセリフを聞き逃してしまうこともありました(笑)。情報も多いので、2回観るぐらいがちょうどいいかもしれないですね」
神武「それぞれのキャラクターの出会いのシーンもよかったです。バートとハロルド、バートと(サルダナ演じる)看護師、ハロルドとヴァレリー、どれも出会った時に互いになにかを感じていた。『相手をじっと見つめると、どんな子どもだったかわかる』みたいなセリフがあったけど、真剣に向き合うと感じるものがあるんですね。だから向き合うことなく、近くにいてなんとなく結ばれたベールと妻の関係は最悪という」
下田「デ・ニーロ演じるアメリカの英雄的な将軍が、家に押しかけてきた3人を信用できるか試す方法が、かつて彼らが歌ったナンセンスソングをもう一回歌わせるというところも好きですね。人のことを思い出したり信頼するのに必要なのは、肩書きとかテストに通ることではなく、実はこういうことなのかも。『あ、思い出した。こいつらだ!』って」
平井「『歴史は繰り返す』というセリフがあるじゃないですか。私はこのフレーズ、いままでネガティブな意味合いでしか聞いたことなかったんですよ。でも、この映画を通して聞くと、そうじゃない部分、美しいものも繰り返されるんだよってことがわかるんです。良い思い出、良い出来事も繰り返されていくというところが、未来に繋がるなと思いました」