男女の友情、史実に基づくミステリー、豪華キャスト…。魅惑の要素がたっぷり詰まった『アムステルダム』を、編集部&映画ジャーナリストが語る!
「窓から射す日差しや街灯など、照明や色彩も美しかった」
神武「歴史といえば、いろんな文化が花開いた1910~30年代を再現したセットや衣装、小道具も凝っていて、それも見ているだけでも楽しめました。窓から射す日差しや安っぽい街灯など照明や色彩も美しかったし、人物だけでなく背景だけを見ていても楽しい映画ではありました」
下田「アムステルダム時代のヴァレリーの部屋にあふれていた不思議なアートもすてきでしたね。兵士の体から摘出した爆弾などの破片でできた作品とか、彼女の意志の強さが感じられました。アートの一部は、実際にロビーが作ったものもあるらしいですね」
杉原「衣装でいえば、夜会のドレスがすてきでした。アニャちゃんなんかもう『フィギュアか!』と思いました(笑)。映える人たちばかりで、スクショしたい!みたいな瞬間が、いっぱいありました」
下田「彼女の夫役がラミ・マレックなので、夫婦そろってすごい目力という(笑)。みんなそれぞれ違う目力を持った俳優ばかりでしたけど、クリスチャン・ベールは義眼の医師という設定で、彼の“目”も印象的。戦争から戻って来てからのシーンはバックブレースという強力なコルセットを使って身長を5センチ縮めて演じたそうで、今回の変貌ぶりも見事ですよね」
「鑑賞後に『アムステルダム』というタイトルがじんわり染みてくる」
杉原「やっぱり私はメイン3人の雰囲気が好きですね。ああいう性別を超えた男女3人の友情って憧れでもあります。ヴァレリーの『友だちって自分で選べる家族みたいなものだよね』ってセリフにもリンクしますよね。ミステリーの要素とか、いろんな楽しさはあるんですけど、観終わったあとにせつなくも温かさを感じました。あの3人だったから、そういう気持ちになれたんだろうなと。とにかく、あの3人を観に行ってほしいです!」
平井「私は最初にも言ったのですが、テイラー・スウィフトに注目してほしいです。彼女の演技、演じるキャラクターがどうなるか。プレミアでは、彼女のとあるシーンで『ワー!』と劇場の全員が一斉に大きな声を上げたんです。そういう声を劇場で聞くのが久しぶりだったので、そういう意味でもおもしろかったですね(笑)」
神武「凝った美術や衣装、特殊効果を使って日常とは違う世界に連れて行ってくれる。すごく映画らしい作品ですし、そういう意味では劇場で味わいたい映画ですよ。奇想天外な物語が、事実に基づいているという点も興味深いです」
下田「ストレートな『アムステルダム』というタイトルが、だんだんと心に染みてくる構成がよかったです。観る前は『オランダ?』程度に思っていましたが、そういうことじゃなく誰もが心に持っている普遍的な意味が込められていて、そこがすごく染みるんですよ」
取材・文/神武団四郎