第35回東京国際映画祭、審査員記者会見でジュリー・テイモアは『羅生門』、シム・ウンギョンは『リリイ・シュシュのすべて』愛語る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
第35回東京国際映画祭、審査員記者会見でジュリー・テイモアは『羅生門』、シム・ウンギョンは『リリイ・シュシュのすべて』愛語る

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第35回東京国際映画祭、審査員記者会見でジュリー・テイモアは『羅生門』、シム・ウンギョンは『リリイ・シュシュのすべて』愛語る

第35回東京国際映画祭(TIFF)のコンペティション部門の審査員記者会見が、10月25日にミッドタウンBaseQで開催。審査委員長を務めるジュリー・テイモアをはじめ、シム・ウンギョン、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、柳島克己、マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセルら審査員たちが登壇した。

ブロードウェイ・ミュージカル「ライオンキング」の演出や、『フリーダ』(02)などの監督を務めたテイモアは「人生で初めて観た映画は、黒澤明監督の『羅生門』で、この映画との出会いによって私は人生が変わりました。黒澤監督がいたからこそ、私は監督になりました」と熱く語った。

今年のTIFFでは「黒澤明賞」が14年ぶりに復活し、黒澤監督の名作『生きる』(52)を、第二次世界大戦後のイギリスを舞台にリメイクした『生きる LIVING』も上映されるが、テイモアは「だから今回、この映画祭で黒澤監督の功績を称えられることがうれしいです。彼の映画は美しく、想像力やストーリーテリングに富んでいますし、私にとってのマスターです」と心から称えた。

審査委員長を務める舞台演出家、映画監督であるジュリー・テイモア
審査委員長を務める舞台演出家、映画監督であるジュリー・テイモア

ワールド・フォーカス部門で『鬼火』(22)と『この通りはどこ? あるいは、今ここに過去はない』(22)の新作2本が上映される映画監督のロドリゲスは、「映画には個々の言語、個性があります。私も世の中の見方を作品を通して見せていくし、自分のビジョンを伝えることができるし、観客のみなさんともコミュニケーションを取ることができます。国は違えど、映画は普遍的なもので、特にいまの恐ろしい時代において、映画や芸術は希望をもたらすものだと思います」と持論を述べた。

元アンスティチュ・フランセ館長であるナヴァセルは「私が初めて観た日本映画は『東京物語』です。だから初めて日本に来た時に熱海に行ったけど、大変がっかりしたんです。私は、2人の老人が海を見ていた映画のなかの熱海を想像していたので…」とおちゃめに語り、会場の笑いをとる。ナヴァセルは続けて「『東京物語』からは、多くのことを学ぶことができましたし、いまは日本においても本作が、すごく重要な作品だということを知っています」と作品を称えた。

韓国の人気女優シム・ウンギョン
韓国の人気女優シム・ウンギョン

そして『新聞記者』(19)で日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞したことも記憶に新しい韓国の人気女優シム・ウンギョンも日本映画への愛を語った。「中学生の時に初めて観た日本映画は、岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』で、衝撃を受けました。こういった構成の映画も存在するんだと思い、夢中になりましたし、感受性を豊かにしてくれました。だからいま、この場にいられるのは言葉にできないほどの気持ちです」と感無量の様子だった。

北野武監督作などの撮影監督として知られる柳島は「映画は、なにかしらの表現をするもの。どんな作品も映像表現が現場で行われなければいけない」と力強く語り「だから今回いろんな映画に出会えることが楽しみです。また、審査員の方も非常にフレンドリーな方ばかりで、最終選考まで楽しみたいです」と笑顔を見せた。


今回TIFFのテーマが「飛躍」だが、テイモアは映画作りについて「独自性がとても重要です。恐れずに独自のオリジナリティにあふれた物語を作ることが大切です。いまは同じような作品が繰り返し作られていますが、たとえ同じ物語を手掛けるにしても、なにか独自の方法で作っていかなければいけない。そこはリスクが大きければ大きいほど、見返りも大きいと思います。また、それが実現できるように支援をしていくことも大事です」と課題も述べた。

第35回東京国際映画祭は、10月24日~11月2日(水)の10日間にわたり、シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催中。

取材・文/山崎伸子

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