永野芽郁、撮影現場の戸田恵梨香は「怪物みたい!」芝居のスイッチの入り方に驚き
累計発行部数120万部を突破した、湊かなえによる同名小説を映画化した『母性』。10月27日に第35回東京国際映画祭で完成報告会が行われ、戸田恵梨香、永野芽郁、廣木隆一監督が出席。母娘役として共演した戸田と永野がお互いの印象を語り、永野は「怪物みたい」と、戸田の芝居のスイッチの入り方に驚いたことを明かした。
“娘を愛せない母”、ルミ子(戸田)と、“母に愛されたい娘”、清佳(永野)、それぞれの視点である事件を語り、次第に食い違う2人の証言から、事件の秘密と母娘の関係性を描きだす本作。戸田と永野はドラマ「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」でも先輩・後輩役として共演しているが、本作の撮影はそれ以前となる昨年の4月に敢行。本作の撮影が、2人の初共演となる。
母親役として新境地を切り開いた戸田は、「『永野芽郁さんの母親にはなれないだろう』と思いました。ウソでしょ!って」とオファーが舞い込んだ瞬間を笑顔で述懐。「親子ほど歳が離れているんだろうかと、ちょっと調べたくらい。成立させられるのか不安だったんですが、実際に現場に入っていろいろと考えていると、私が演じたルミ子自身が“母親になれない”という人だったというのもありますし、芽郁ちゃんが私のことを母として見てくれていた。そのおかげで、私の精神的にはなんとか成立させられたという感じでした」と難役を演じるうえで支えとなった、永野に感謝していた。
一方の永野は「出演を決定するにあたって、最初に戸田恵梨香さんが主演だという話を聞いていたので、脚本を開く前に『戸田さんだったらやります』と。それくらいいつかご一緒したかったので、本当にうれしかった」と憧れの人だったという。さらに撮影が始まってみると「スイッチが入った時の戸田さんは、もう怪物みたい」と表現して、これには戸田も「そう?」と笑顔。永野は「誰も声をかけられないくらい、グワーッと入っていく。それを間近で見させていただいたのは、すごく貴重な経験になりました」と俳優としても大いに刺激を受けたと話す。
劇中で戸田は、ルミ子という女性の20年以上の月日を演じた。戸田は「運よく、朝ドラを経験させてもらっていたので、その時はもはや15歳から50代前半まで、40年近くの人生を体験させてもらった」と述懐。「一つの引き出しというものがあった。その引き出しを今回開かせてもらった」と朝ドラの経験を生かすことができた様子。“母に愛されたい”ともがく清佳も難役と言えるキャラクターだが、永野は「現場にいらっしゃる戸田さんが、ルミ子さんでしかなかった。現場に入るまではどうしよう、難しいなと思ったけれど、現場に入ると戸田さんを見ているだけで、私は大丈夫だと思った。『戸田さんに、ついて行かせてもらいます』という感じでした」と絶大な信頼を寄せていた。
また母娘を演じる映画にちなみ、「自分はどのような娘か?」との質問が投げかけられるひと幕も。戸田は「箱入り娘じゃないですけれど、大事に大事に守られてきたなと思います。幼少期はいつもプリンセスに憧れて、ドレスなんかを着て走り回っていたりした」とにっこり。「学生になると、早く自立したくてしょうがないと思っていました」と振り返る。永野は「私、いい娘だと思うんですよ」と自画自賛して、会場の笑いを誘った。「お母さんが喜ぶことを常にしたいと思っているので、『行きたい』という場所には連れて行く。いい娘ですねぇ、私。月1くらいでお母さんとお出かけに行ったりしています。出演作は初日に絶対に観に行ってくれる母も、いい母ですね」と愛情をあふれさせていた。
10月5日に行われた第41回バンクーバー国際映画祭でのワールドプレミア上映に、原作者の湊と一緒に参加した廣木監督は、「湊さんが、本当にこの映画が好きなんだとわかった。Q&Aセッションで(観客から)質問がくるんですが、全部湊さんが受けてくれる。湊さんが、自分の原作の映画を送りだすお母さんに見えた。『ここに母性があるじゃん!』と思った」と原作者の反応を喜んでいた。
取材・文/成田おり枝