”極悪ヴィラン”になったソン・ソック「最も血気盛んで、鬱憤が溜まっていた時期を思い出しながら役作りを」
ソン・ソック以上に自由自在に七変化する俳優がいるだろうか。“2022年はソン・ソックの年”といっても過言でないほど、様々なジャンルの映画やドラマで全方位的に活躍し、韓国ではもはや“ソン・ソックシンドローム”を起こしている。Netflixで配信中のドラマ「私の解放日誌」では自分の本音をなかなか表さないミステリアスな男・クさん(ク・ジャギョン)役を務め、強烈で圧倒的な存在感を放ったが、『恋愛の抜けたロマンス』(21)では仕事も恋愛もカモにされる草食系男子ウリとしての演技を見せた。そして映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』(公開中)では、極悪非道な犯罪者として、また新たな一面を見せる。
ミステリアスな田舎青年から、極悪非道な犯罪者へ大変身!
『犯罪都市 THE ROUNDUP』は衿川(クムチョン)署強力班の型破り刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)と冷酷な凶悪犯罪者カン・ヘサン(ソン・ソック)の想像を絶する死闘を描く。カン・へサンはベトナムで韓国人観光客を拉致して家族から巨額の身代金を奪い取ったり、人質を残酷に殺害しても一抹の罪悪感すら覚えない人物。善と悪が共存しているような鋭い顔立ちと特有の雰囲気のおかげで、いままでソン・ソックはたくさんの監督から悪役を提案されてきたという。しかし、「どうせ悪役になるなら、最も邪悪で強いヴィランを演じてみたい」という理由で彼が選んだ作品が『犯罪都市 THE ROUNDUP』である。
「複雑な要素があまりなく、シンプルで痛快な作品だからこそ、視覚的楽しさが大事だと思いましたので、外見から”悪人”という雰囲気を出したかったので、衣装やメイクなども、何回も打ち合わせを繰り返しながら仕上げていきました。体重を増量したり、1年にかけて日焼けをしたり。おかげで肌にはかなり負担がかかりましたけどね。カン・へサンの怒りを表現するために、自分が最も血気盛んで、鬱憤が溜まっていた時期を思い出しながら役作りをしました」
さらに、カン・へサンになりきるために、フィットネストレーナーのコーチングを一切受けなかった。カン・へサンは、身体を鍛えるためにジムに通いそうな人物ではないと判断したからだ。言うことなしの筋肉質ボディーよりは、生き残るための死闘や悪行を重ねてきたカン・へサンの人生を覗き見できる体型にしたかったという。
「かっこよく見えるよりは、現実的に見えたほうがいいんじゃないかなと思いました。ただひたすらいっぱい食べて、いっぱい運動しましたね。初めてベンチプレスを120kgまであげてみました。カン・へサンなら、そういうバカみたいなところがありそうな気がしたんです。食べたいものがなんでも食べられるのはとても幸せでした(笑)」
シリーズ前編のヴィランは意識せず、自分にしかできない”カン・へサン”を演じたかった
ソン・ソックは『犯罪都市 THE ROUNDUP』での自分の役割を誰よりも正確に理解していた。観客がマ・ソクトという、正義感に溢れて頼りになるキャラクターに感情移入し、「あいつだけは絶対捕まえてやる」と思えるように、無慈悲な悪人を演じる。そして気をきむ激戦の末にボロボロになり、惨めに崩れてしまう。それがヴィランの役目だ。
シリーズ前編である『犯罪都市』ではユン・ゲサンが犯罪組織のボスのチャン・チェン役を務め、”史上最強のヴィラン”と絶賛された。彼のパロディも韓国で大流行し、未だに『犯罪都市』といえばチャン・チェンを思い出す人も少なくない。新シリーズのヴィランを任されたソン・ソックとしては、かなりのプレッシャーがかかっていたのではないだろうか。
「”チャン・チェンを越えるヴィランになれそう?大丈夫?”とか、”チャン・チェンよりインパクトある演技をしなきゃ”など、周りからすごく言われましたが、そういうところは全然気にしていなかったです。シリーズとはいえ、全く別の作品だと思っていたので、ただカン・へサンという人物を演じることだけに集中しました。映画を観た方々からは”チャン・チェンとはまた違うタイプのヴィラン”ともよく言われますが、そこも特に意識したわけではなく、徹底的にカン・へサンになりきろうと思った結果、そういうキャラクターが生まれただけです」
一番印象に残ったシーンを聞くと、ソン・ソックは「エレベーターでのアクションシーン」だと答えた。このシーンは、「マ・ソクトと会う前に、カン・へサンの強さと残酷さがわかるシーンを入れてほしい」という、ソン・ソックの提案から実現された。
「監督からOKサインをもらいましたが、”もう一回撮影したい”とおねだりしたシーンでもあります。結果、僕だけじゃなく、監督とスタッフ、キャストたちもみんなが満足できる形になったので、本当によかったと思います。一所懸命アクションシーンの練習をした甲斐がありました」