『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』最速レビュー!喪失感を克服する“ドキュメント”のような映画に集ったキャスト&スタッフが想いを吐露

コラム

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』最速レビュー!喪失感を克服する“ドキュメント”のような映画に集ったキャスト&スタッフが想いを吐露

11月11日(金)に公開となる『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、2018年公開の『ブラックパンサー』直後から物語が始まる作品だ。アベンジャーズとサノスの最終決戦が描かれた『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)以降に起きたことが、映画内で明らかになる。つまり、『ブラックパンサー』のキャラクターたち、そして彼らを演じる役者も、観客と同様に深い悲しみを共有し、喪失感を克服していく。『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、主演を失うという悲劇からどう立ち直るかという、ドキュメントのような映画でもあるのだ。

現地時間10月26日にロサンゼルスで行われたワールド・プレミアの翌日、ライアン・クーグラー監督とレティーシャ・ライトルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラらキャストは、上映のあとの想いを吐露している。まさに、“吐露”という表現がふさわしいくらい、誰もが感傷的な想いを打ち明けていた。プレミアの時と同様にチャドウィック・ボーズマンの肖像を模したペンダントをつけていたクーグラー監督は、「チャド(ウィック・ボーズマン)を失った個人的な悲しみと、映画を完成させなければいけないという責任の2つによって突き動かされていました」と語る。

そして、一旦書き上げた脚本を全面的に描き直し、再びワカンダ王国の物語を描くことを誓ったそうだ。「チャドは私が出会ったなかで最もユニークな人間で、彼を知るごとに彼に影響を受けていました。彼を失った時、私の心は深く傷つきました。彼が私の人生から去ってしまったのと、まだ彼が出会っていない多くの人のことを思い、胸が痛みました。まさに、宇宙的な不公平だと思いました。そして、彼は真の野心家だったことを思い出したのです。やるからには大きくやらなければ、彼のために大きな作品をやろうと決めました」。

ブラックパンサーを演じ、世界中のファンに希望を与えたチャドウィック・ボーズマン
ブラックパンサーを演じ、世界中のファンに希望を与えたチャドウィック・ボーズマン[c]Everett Collection/AFLO

「この映画の感情を牽引する方法は、シュリの目や感情のレンズを通して見ることだ、と気づきました」(クーグラー監督)

チャドウィック・ボーズマンを失った「ブラックパンサー」チーム、『ワカンダ・フォーエバー』公開への想いを語る
チャドウィック・ボーズマンを失った「ブラックパンサー」チーム、『ワカンダ・フォーエバー』公開への想いを語る[c]Marvel Studios 2022

ワカンダの国王でブラックパンサーのティ・チャラを演じたボーズマンがこの世を去った2020年8月28日、クーグラー監督ら『ブラック・パンサー』続編の制作チームは、脚本の完成稿をもとに撮影準備を行っていた。ボーズマンの4年にわたる癌との闘病は周囲に知らされることなく、ティ・チャラの妹シュリを演じたライトら共演者も、家族による発表まで知ることはなかった。ライトはその日、携帯電話にひっきりなしにかかってくる電話で、ボーズマンの死を知ったという。彼女は、「『お悔やみ申し上げます』というメールが来ていて、『一体誰を?』と考えていた時に、私のパブリシストから『チャドへの追悼メッセージを出しますか?』と書かれたメールが来て、その瞬間に意識が遠のきました。そして、『電話すれば、チャドが出てくれるはず』と考えて何度も電話をかけました。私が『ふざけてるだけでしょ?』『5秒で嘘だと言って』と電話口で言っているのを聞き、“彼”はずっと黙っていました。そして、『チャドの家族です』と言う声が聞こえ、その時気を失いました」と、その日のことを鮮明に覚えていると言う。しばらくして、ライトはボーズマンに宛てた詩をInstagramに投稿している。

チャドウィック・ボーズマンの死後、Instagramでボーズマンに宛てた詩を投稿したレティーシャ・ライト
チャドウィック・ボーズマンの死後、Instagramでボーズマンに宛てた詩を投稿したレティーシャ・ライト写真はletitiawright(@letitiawright)公式Instagramのスクリーンショット

「いま思うと、このビデオで水の映像を使っているのは不思議です。なぜなら、『ワカンダ・フォーエバー』において水はとても象徴的なものだから。私の涙、心、花が咲くところを表すために水の映像を探し続けました。彼のために詩を書くことが、私にできる最善の方法だと思ったからです」と、168.8万回以上(11月8日現在)再生されている投稿について語っている。


【写真を見る】首元にはチャドウィック・ボーズマンのペンダント。『ワカンダ・フォーエバー』のプレミアに登場したライアン・クーグラー監督
【写真を見る】首元にはチャドウィック・ボーズマンのペンダント。『ワカンダ・フォーエバー』のプレミアに登場したライアン・クーグラー監督[c]Marvel Studios 2022

その後、ライアン・クーグラー監督は、「彼女の詩を読んで、この映画の感情を牽引する方法は、シュリの目や感情のレンズを通して見ることだ、と気づきました」と、脚本について話し合った際に告げたという。「ライアンの助言によって、シュリが感じていることを表現するためには、心を閉ざすのではなく、開かなければならないと気づきました。彼女が感じている感情に入り込むためには、私やルピタ(・ニョンゴ)、ダナイ(・グリラ)が置かれている状況をリアルに表現する必要がありました。私たちがこの映画について率直に語り合った時、みんな涙を流していました。その感情に触れ、それを映画に反映させる必要がありました。とても大変でした。でも、キャストと一緒に悲しみの様々な段階を経験したからこそ、その感情を映画に注がなければならないと思いました。だから、映画を通して私たちが過ごした真実の姿を見せたとも言えます」。ライトが溢れる感情を抑えながら一気に話すと、会場から大きな拍手が起きた。

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