信頼の絆は「オーシャンズ」シリーズから。ジョージ・クルーニー&ジュリア・ロバーツの華やかな共演歴とは
ハリウッドきっての大スター、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが5度目の共演を果たした『チケット・トゥ・パラダイス』(公開中)は、どこを切っても楽しくて、何粒も美味しいロマンチック・コメディだ。ここまでネームバリューを持つ2人がW主演のみならず、仲良くプロデューサーに名を連ねるほどだもの、おもしろくないわけはない。しかも最初から2大スターを当て書きしたというのも大胆だが、それを読んだジョージが、「そっちがやるならこっちもやる」とジュリアに電話をかけ、ジュリアも「そっちがやるならやるわよ」と返したなんて、完成前から「そのおもしろさ」は約束されたようなもの。その通り、冒頭で2人が繰り広げる丁々発止のディスり合いに、誰もがきっと素直に笑い声を上げてしまう。
2人が扮するのは、いまや犬猿の仲となった元夫婦、デヴィッドとジョージア。離婚して20年になる2人は、愛娘の大学の卒業式で顔を合わせるや否や、いかに自分が娘を愛しているかマウントを取り始める。アドリブを大いにかました、そのシーンも必見だ。ところが自慢の娘・未来の弁護士リリーが、卒業旅行先のバリから「恋に落ちた。地元の青年と結婚したい」と連絡してきたから、さあ大変!2人は娘の結婚を阻止するため、束の間の休戦を決め込み、あたふたとエキゾチックなリゾート地バリへ手を携え乗り込んでいく。
面白いのは、2人が言い合いをすればするほど、阿吽の呼吸をどこか互いに楽しんでいる風になっていくこと。デヴィッドの前で、パイロットのハンサムな今カレとイチャついてみても、元夫と口喧嘩する時のジョージアの表情の方が生き生きしているように。デヴィッドもまた、蓋をして来た元妻への気持ちが漏れ出し…。バリの街で、酔っぱらった2人が懐かしのディスコダンスを踊り狂うシーンも、思わず大爆笑。デヴィッド&ジョージアの輝ける青春であると同時に、ジョージ&ジュリアが素で楽しんでいる瞬間も映り込み、掛け合わさって楽しさが増幅しているのは間違いないだろう。クルーニーが、「ジュリアと相性がいいのは、お互いの笑いのツボを心得ているからだと思うんだ。笑いのセンスが似ているし、お互いにピンとくるんだよね。昔からそうだった」と語るのにも深く納得!
本作が味わい深いのは、親子それぞれのロマンスだけでなく、娘の成長や旅立ちを祝福する幸せと、それと同じぐらい、子離れする寂しさや痛みが伴うという親心の妙が描き込まれているからでもある。しかもそこから一歩踏み込み、新しい環境に飛び込むことをいとわない娘の若さや勇気や率直さから、親=大人が背中を押されるという新しい展開だ。トロピカルな景色、自然の美しさ、バリの人々の温かさや大家族の厚い情など、目で見えるものから見えないものまで、すべてが有機的に呼応し合い、人生を豊かに暮らしていけるポジティブな魔法を掛けられたような快作だ。